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「ノーベル賞の大隅 良典栄誉教授が講演・」・崇城大学50周年の集いで

2017年9月15日(金)

 昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大東京工業大学の大隅良典栄誉教授が9月13日、熊本市中央区のホテル日航熊本で「小さな細胞、酵母と向き合った40年」と題して講演した。
 これは崇城大学(熊本市西区)の開学50周年記念の感謝の集いで講演したもの。大隅栄誉教授は昭和20年2月生まれの72歳。福岡市出身。東京工業大学科学技術創成研究院特任教授・栄誉教授。「オートファジーの仕組みの解明」で昨年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。大隅栄誉教授は「ノーベル賞を受賞してから講演や執筆などで大変忙しくなった」と笑わせたあと、「私は昭和20年2月生まれで、福岡市出身です。戦後は貧しく、私は栄養失調になったこともあります。小学生時代は自然の中、田んぼ、小川、林の中で育ち、昆虫少年でした」と自己紹介した。「東大を卒業し、東大理学部植物学教室で液胞の研究に取り組みました。基礎生物学の地味な研究です。少し難しくなりますが、生命は負のエントロピーを食べているんです。アミノ酸はタンパク質の構成要素で、水が作用して起こる加水分解によってできます。この合成と分解で、人間は何も食べなくても、水だけで1週間は生きていけるのです。オートファジー(細胞の自食作用)を見つけて、私の人生は変わりました。飢餓状態になると、全力でオートファジーが起こるのです。オートファジー は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みです。酵母から人にいたるまでの生物に見られる機構で、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原菌を排除することで生体を維持しています。このほか、細胞のがん化の抑制にも機能しているのです」などと説明した。
「私はこれまで知的好奇心に支えられ、長い間研究に取り組んできました。研究の成果は沢山の偶然の出合いです。オートファジー は、まだ3割ぐらいしか分かっていないと思います。今後は若い人たちがこの新しい分野にチャレンジしてくることを望んでいます」と締めくくった。

「オートファジーで私の人生が変わった」と大隅栄誉教授
大隅栄誉教授の講演を聴く約700人の出席者
細胞・生命の基本単位である生体膜
オートファジー(自食作用)・マウス、ES細胞、アミノ酸
赤いポイントを示しながら講演する大隅良典栄誉教授
酵母細胞のオートファジーの模式図