トップ Companies くまもと経済EX 2007 “創”を持って刻み込む横場の年輪
くまもと経済EX 2007

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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製造・農業
“創”を持って刻み込む横場の年輪
横場工業
日本最大規模の“炭埋”(9トン)『酸洗浄廃水浄化処理装置』で環境向上を
酸洗浄廃水浄化処理装置の前で。右から石内義夫(有)呉緑化センター社長、江崎拓茂横場工業(株)社長、稲田忠夫横場工業(株)協力会会長
 八代港海面にひときわ目を引く専用岸壁、辺りを見渡せば殺風景な工業地域に人の心を和ます庭園を持つ横場工業梶i八代市新港町、江崎拓茂社長)。
 同社はこのほど、総事業費約4千万円をかけ、敷地内に「ステンレス製品 酸洗浄廃水浄化処理装置」を開発、7月中旬に稼働する。
 ステンレス製品などの溶接・加工で表面に付着した汚れを洗浄する際には“酸”を使用するが、酸で洗浄した“工業排水”をそのまま川や海などに垂れ流すと公害など大きな問題へと直結するおそれがある。現在では官公庁からの通達も含め、排水処理への配慮は必要不可欠で、不十分だと大手からの仕事の受注は困難だという。同社では従来小規模な処理設備で対応していたが、ステンレス需要の伸びと、環境を配慮する企業へのさらなる前進を遂げるため、大規模な設備を開発するに至った。同装置は、18×20mの洗浄場に加え、数段階に分けて排水をろ過していくもの。洗浄場の土には、浄化作用を持つ“炭”(9トン)をコンクリートに混ぜ敷き詰めるなど、装置自体も環境に配慮したオリジナリティ溢れる装置となっている。
 「酸の排水処理について頭を悩ます企業は多く、洗浄処理装置が無く仕事を受注できずに困っている企業も少なくない。そこで、今回のノウハウを生かした大小規模に応じた設計・施工も行っていく方針」と3代目・江崎社長。
工業会における救世主に
 同処理装置の開発は、横場一馬初代社長と同じ創業精神を持つ広島県の石内義夫旧燉ホ化センター社長のアイデアから具現化した。同社長は環境・福祉などに人一倍強い思いを持ち社会貢献活動を行っている人物だ。石内社長は「環境問題への対応は企業として当然の使命。この処理装置は画期的なもので、廃水処理装置のみでこの規模を持つ工場は全国的にも類を見ない。工業会にとっても救世主になっていくだろう。炭には浄化作用や、人体におよぼす疲労などを和らげる効果があるとされるため、自然環境と職場環境の向上という双方に役立っていく。これでまた、横場の新しい歴史が始まるが、企業革命はまだまだ序章にすぎない。まだまだ進化しますよ」と笑顔で話している。
 横場工業の新たな環境保全への取り組み…。くしくも、廃水処理装置の着工は横場初代社長の命日の翌日。まるで、横場社長が『ふっ』と新しい生命の息吹を吹きかけたようだ。そして、それは約45年前、石内少年が思い描いていた夢が現実のものとなった瞬間でもあった。
八代の観光スポットへ!工場内庭園づくり継続中
八代港海面に目を引く専用岸壁
 同社では昨年から地域貢献活動の一環と、横場初代社長の「会社=家庭ならば憩いの場=庭が必要」との理念を維持・継承するため、工場内庭園『一馬庭園』を建設中だ。“心和み皆が笑い集える庭園”をコンセプトに石内社長が施工、年齢を感じさせないほど精力的に石上を駆け巡る。圧巻の一言だ。伊予の青石、奇岩石、鳥海石、木化石など名石の数々に、本キリシマ、花水木、陽光桜、しだれ梅など四季折々で楽しめる木々が百花繚乱咲き誇る。すべての人々に開放する同庭園は、日本最大規模の工場内庭園として、いずれは八代の観光スポットとして注目を浴びるに違いない。俗に、石を好む人は虜になると言われるが、面白いもので、晴れた時と雨の時では“石の顔”が異なり放つものが違う。非常にそれぞれが味わい深いものである。ぜひ一度訪れ、鑑賞していただきたいものだ。
 江崎社長は「庭は芸術であり心が表れるもの。芸術(造園)は作家に惚れ、作品に心を観るという。庭づくりを通し、社員一同さまざまなことを学んでいきたい。引き続き八代が誇る日本最大級の工場内庭園に創り上げていく」と意気込みを語っている。
「信心誠和」の人財を育成 〜社員の意識改革を〜
 「素直な心を持つことで生まれる人を信じる心“信心”は、信じ合う心に派生し、さらには“誠(真実)”を生み出す。真実は絶対に『1+1=2』にしかならない。誠を持った人々の中には、自然と皆が手を取り合い生きて行こうという“和”が生じる」と石内社長は『信心誠和』という言葉の意味を語る。
 同社が目指す人財育成の根底はここにあると捉えた江崎社長は、旧態依然とした企業体質を根底から変えるために、“社員の意識改革”の実行を掲げた。「一生懸命生きる人は人生という山をらせん状に一歩一歩のぼる。そこで気づくのは同じ1つの景色を見ても徐々に見えるものがあり、物事はあらゆる角度から見なければならないということ。らせん状にのぼると、人から見える部分と見えない部分があるが、これは人間、裏表があってはいけない。“むしろ人が見てない所ほど”頑張らなくてはならないということを言っている。『継続は力なり』という原点に立ち返り、初代からの伝統を扇子の軸となって裾野に広げ『扇子状の組織』を創り上げていく」と江崎社長。
 『酸洗浄廃水浄化処理装置』、『工場内庭園』、『人財育成・意識改革』・・・。横場の年輪(歴史)に刻まれるさまざまな形の“創”。今後も横場の動向に注目だ。



横場工業梶@江崎 拓茂 社長
えざき・たくも 熊本市出身。1947(昭和22)年1月1日生まれの60歳。東海大学工学部卒。趣味は読書。

旧燉ホ化センター 石内 義夫 社長
いしうち・よしお 広島県呉市蒲刈町出身。1943(昭和18年)7月30日生まれの63歳。趣味は魚釣り、鳥を育てること。
企業DATA
[所在地] 〒866-0034 八代市新港町1-6
[TEL] 0965-31-3200
[FAX] 0965-37-0332
[事業内容] 一般産業プラント、設計、製作、据付(各種サイロ、タンク、搬送・環境設備など) 省力化機器、企画・設計、製作(自動機、ロボットなど)
[代表者] 横場工業梶@江崎 拓茂 社長   旧燉ホ化センター 石内 義夫 社長
[URL] http://www3.ocn.ne.jp/~yokoba/

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※この記事内容は、くまもと経済EX:2007年7月1日発行分の掲載内容です。