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くまもと経済EX 2008

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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新二輪工場が稼働ホンダの原点と先進性担う
本田技研工業褐F本製作所
ホンダ国内唯一の二輪生産拠点へ
4月から生産を開始した新二輪工場、建屋面積6万4000u、年間生産能力は約50万台
 今年4月、本田技研工業褐F本製作所(菊池郡大津町)に、新二輪工場が完成した。これまで、浜松製作所(静岡県浜松市)で生産していた中・大型二輪車の生産を順次移管。熊本製作所が、“カブ”シリーズから6気筒・排気量1800cc超の大型車まで、すべての二輪車を生産する。ホンダ国内唯一の二輪車生産拠点となる。4月に着任した渡部勝資・熊本製作所長は「2輪の生産移管は、創業の地・浜松から熊本へ、ホンダの創業精神を受け継ぐこと。浜松製作所のDNAを、熊本で進化させたい」と抱負を語る。
生産能力は従来の2倍に
今年5年エンジン工場の立地協定を結んだ。左から渡部勝資所長、蒲島郁夫知事、家入勲大津町長
 新二輪工場は、建屋面積約6万4千uの大規模工場。生産能力は年間約50万台(ATVを含む。07年度の二輪車完成車生産台数は29万5千台)とこれまでの2倍近くまで増強された。来年夏ごろまでをめどに、徐々に生産車種・台数を増やしていくほか、本工場(旧工場)から、コミューターの製造ラインも新工場に移管、エンジン組立ラインの立ち上げ、機械加工や鋳造の整備を導入していく。エンジン移管も含めた総投資額は約330億円。
“グリーンファクトリー”CO2排出量を約20%削減
1958(昭和38)年の発売以来、世界160カ国以上で愛用され、08年4月末に全世界の累計生産台数6000万台を達成した「カブ」シリーズ。写真はタイで販売している「カブ」
 新二輪工場は・「光・風・水」をコンセプトにした環境重視型の工場である。「光」は、太陽光発電の利用。熊本製作所敷地内にあるホンダソルテックが製造したソーラーパネル1008枚を食堂部の屋根部分に設置している。発電能力は120キロワット級で、新二輪工場の食堂照明設備をまかなうことができる。「風」は、自然の空気の有効活用。工場建設に伴う事前の地盤調査で偶然見つかった、地下80mの所にある風穴(ふうけつ)から流れる年間通して18℃の空気をウェルカムホームの空調の一部に利用している。「水」は、雨水の有効利用。夏場に貯めた雨水を屋上に霧状に散布することで、蒸散作用で温度を下げる仕組みを導入している。
 また、同工場は「人と地球にやさしい工場」をコンセプトに、ホンダの最新鋭の高効率生産技術を取り入れ、既存工場と比較してCO2の排出量を約20%削減する“グリーンファクトリー”となっている。
世界22カ国32拠点のマザー工場
汎用工場では電子基盤の実装なども行っている
 海外の生産拠点を支援するマザー機能も熊本製作所が持つ大きな特長の一つ。熊本で蓄えた技術・ノウハウを海外の工場に伝承するほか、海外拠点をホンダ独自の考え方、手法でオペレーションする“ホンダ・フィロソフィー”の伝承を行っている。
 中・大型二輪の生産移管で、これまで浜松が担当していたアメリカ、ヨーロッパの工場も含め、熊本製作所が世界22カ国32拠点の二輪の“マザー工場”となった。現在、熊本から約140人が駐在員として海外拠点で支援業務を担当中。この駐在員を含め約360人の従業員が、海外拠点で新工場や新機種の立ち上げ、新しい技術の投入などを指導している。今後も技術レベルの向上や、技術の育成に努め、海外拠点を統括するマザー機能の充実も図っていく。
ホンダソルテック、太陽電池の量産開始
ホンダソルテックで量産している非シリコン系次世代型薄膜太陽電池
 熊本製作所内にある子会社・ホンダソルテックが昨年、自社開発の薄膜太陽電池の生産を開始した。同社で量産化している太陽電池は、ホンダが独自に開発している太陽電池は、ホンダが独自に開発してきた非シリコン系次世代型薄膜太陽電池で、製造時に必要なエネルギーやCO2の発生を従来の半分に抑えることができ、一般的な太陽電池とほぼ同じ発電効率を実現できるという。年間で一般家庭約8千世帯分(1世帯3.5キロワット換算)に相当する27.5メガワットを生産する計画だ。
“原点”“先進”融合した製作所へ
 05年1月に稼働した汎用エンジンの生産工場では、V-ツインエンジンや水冷エンジンなどの汎用エンジンの生産が移管。熊本製作所に船外機を除く同社の汎用生産が集中されている。国内だけでなく、汎用エンジンの需要が大きいアメリカを中心とした海外向けにも、順調に生産台数を伸ばしている。また、汎用部門の完成機では、ガス器具メーカーと提携して製品化を進めた「マイクロコージェネ」や高齢者向け電動カート「モンパル」などを生産。電子基盤の実装など、全国の製作所の中でも熊本だけが行っている“先進”の製造拠点としての側面も持っている。
 ホンダの原点とも言える二輪生産が集約され、太陽電池の量産化、汎用部門の先進の技術など、全国的にも大きな注目を集めている熊本製作所。ホンダの創業精神でもある“モノづくりにかける熱意”で夢を追求し、ホンダの“原点”と“先進”が融合した、これからの時代にふさわしい製作所づくりが始まっている。



渡部 勝資 所長
わたなべ・かつし/1954(昭和29)年9月9日生まれ。53歳。愛媛県松山市出身、広島大学工学部卒。78年本田技研工業兜l松製作所入社、84年ホンダ・オブ・アメリカ駐在、90年浜松製作所品質課、96年同機種企画プロックリーダー、99年ホンダ・オブ・アメリカ駐在、08年4月から熊本製作所長
企業DATA
[所在地] 〒869-1293 菊池郡大津町平川1500
[TEL] 096-293-1111
[FAX] 096-293-8280
[設立] 1976(昭和51)年1月
[事業内容] 二輪車・汎用エンジン製造・軽四輪エンジン製造
[従業員] 4190人

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※この記事内容は、くまもと経済EX:2008年7月1日発行分の掲載内容です。