トップ Companies くまもと経済EX 2008 ブランドシェアトップの船外機メーカー、その視線は世界へ
くまもと経済EX 2008

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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製造・農業
ブランドシェアトップの船外機メーカー、その視線は世界へ
ヤマハ熊本プロダクツ
 小型船のエンジンである船外機。その中でも「ヤマハ」ブランドは、世界トップシェアを誇り、日本国内はもとより、太平洋の島々からジャングル地帯の河川・湖まで、地球上のあらゆる水域で使われている。漁業や水上運搬、レジャーなどさまざまなシーンで、世界中の人々の豊かなマリンライフを支え続けるヤマハ船外機。その製品を八代港から世界の海へ送り出しているのが、八代市に本社を置くヤマハ熊本プロダクツ鰍セ。今年、創業10周年をむかえ、最先端の製造技術で、世界180カ国に船外機を出荷、世界を舞台に活躍するグローバル企業として、存在感を増している。
世界各国の人々との語らいが、 ワンランク上のものづくりを生み出す
 同社が事業活動の中で追求し続けるものは、使いやすさや安全性、耐久性、経済性、動力性能、そのすべてを兼ね備えた高品質なものづくりだ。「時代とともに製品に求められる要素はさまざまだが、利用者のニーズが変わっても製品の高品質を追求することは、ものづくりの現場の使命だ」。同社の吉村強社長は強調する。利用者の立場にたったものづくりを継続していくために同社では、アメリカやヨーロッパ、アフリカなど世界各国の現地ディーラーを本社に招き、月に1回の市場報告会を開催している。「ディーラーを通して、利用者の生の声や要望に直接触れる貴重な時間」と同社。各国の情勢や製品市場の現状を把握し、それを製品に反映させることでワンランク上の製品を日々、生み出しているのだ。
 現地の利用者とのコミュニケーションの強化。それは、「サービスキャンペーン」という形で、同社従業員の活動にも深く根付いている。サービスキャンペーンとは、年に約4回、社内から従業員延べ10人程度を世界各地に送り込み、現場で船外機部品の点検や修理、交換などを受け付けるという活動だ。「昨年は、ブラジル・アルゼンチン・フィジー・カナダなどを訪れた。現地のお客さまと実際にお会いして、生の声を聞く。従業員にとってはこの上ない貴重な経験ですよ」と吉村社長。この活動は、ワンランク上のものづくりに直結するだけでなく、「利用者の視点で常に物事を考え、自分のやっている仕事の意味を認識する」という同社従業員のマインド面を含めた成長に大きく貢献している活動といえる。
存在感のある企業へ 地域貢献活動を推進
 「2008年は、当社にとって創業10周年の記念すべき年でもある。ここまでトラブルもなく事業を継続出来たのは、地域の皆さまのおかげ。心から感謝したい」。去る5月31日、本社で開催したイベント「第8回ファミリージャンボリー」の冒頭、地域の参加者に向けて吉村社長はこう話した。グローバルな視点での事業活動の一方で、八代の地で事業を継続する同社が企業の方向性として描くもの。それは、地域へ目を向けた活動だ。「地域にとって存在意義のある企業でなければならない。周りから、八代にヤマハ熊本プロダクツがあってよかったといってもられる企業でなければ意味がない」。吉村社長が強調する言葉の中には、企業の社会的責任(CSR)としての地域貢献の精神がある。同社がかねてから行っている緑化活動やボランティア活動への参加、地元企業からの部品調達促進に向けた商談会への積極参加、障害者の社会復帰支援を目的とした活動などは、産業振興をはじめとした地域活性化の一端を担うとともに、同社の企業価値を示す証ともいえる。
 「地域があるから当社がある。周りとのコミュニケーションをとりながら、地域に開かれた企業でないと事業は継続できない」。この企業理念こそが、同社の健全な企業体質と存在感の大きさを物語っている。
「優秀な人材育成は、ものづくりの現場を支える原動力に」
 同社が地域貢献活動の1つとして力を入れているのが、これからのものづくりを支える優秀な人材育成への取り組みだ。一昨年4月には県内外の大学や短大、高専の学生に対し「企業奨学金制度」を創設し運用を開始。ものづくりを志す優秀でありながら、厳しい環境での就学を強いられている学生を同社でのインターンシップでさらに深いものづくり体験をしてもらう条件で選考し、入社義務や返済義務が伴わない給付形式で、大学・短大で月額3万円、高専で2万円を給付するというものだ。また社内的には、独自の人事制度を導入、仕事に対して熱意を持った人材を処遇し、社員のモチベーションの向上につなげており、新卒定着率は、創業以来98%を確保するなど目に見える結果を残している。
 これらの一連の取り組みは、将来的な地元製造業の育成やものづくりの現場を支える原動力となり、「ものづくりは人づくり」とする同社の地域貢献活動の中の重要な位置づけとなっている。
次世代にはばたく全社員の視線は、八代から世界へ
 創業10周年の節目にあたる2008年6月、同社で製造する船外機の累計生産が100万台の大台を突破した。現在同社では、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンを生産し、年間生産台数は17万台で推移。今後も自社で確立している鋳造から加工、塗装、組立の一貫生産ラインの強みを生かし、世界各国の製品ニーズに応え続ける組織体を目指していく構えだ。「累計200万台突破に向け、さらに製造力を高めていきたい」と吉村社長をはじめ、全社一丸となり前を見つめる。
 品質・技術・人材・地域活動、それぞれの面で1つ上を目指し、次世代にはばたくヤマハ熊本プロダクツ。累計200万台に向かう全社員の視線は、今日も八代から世界へと向いている。

吉村 強 社長
よしむら・つよし/和歌山県串本町出身。1949(昭和24)年3月14日生まれの59歳。上智大学理工学部卒。72年ヤマハ発動機鞄社、97年ヤマハマリン潟fィーゼルエンジン開発部門部長。04年5月からヤマハ熊本プロダクツ鰍ノ出向、同6月取締役製造部長、05年3月から現職。趣味はゴルフ、カメラ、ウォーキング、温泉巡り。「野球はタイガース、サッカーはジュビロ磐田」(本人談) 
企業DATA
[所在地] 〒866‐0034 八代市新港町4‐8
[TEL] 0965(37)2121
[FAX] 0965(37)2104
[資本金] 4億9千万円
[設立] 平成10年11月
[事業内容] 船外機製造
[年商] 245億円(2007年12月期)
[代表者] 吉村 強 社長
[従業員] 410人(社外外注を含むと725人)
[E-Mail] http://www.y-k-p.co.jp

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2008年7月1日発行分の掲載内容です。