トップ Companies くまもと経済EX 2008 現場力向上し生産性向上独自の“モノづくり”を確立
くまもと経済EX 2008

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

■医療・医療関連・教育  ■飲食・サービス 
■金融・保険・卸・流通・小売  ■情報通信・ICT関連  ■電力・運輸・建設・不動産  ■製造・農業 
製造・農業
現場力向上し生産性向上独自の“モノづくり”を確立
つちやゴム
自動車・自社開発製品を両輪に
 1949(昭和24)年、月星化成の協力企業として設立したつちやゴム梶i上益城郡嘉島町、倉田雄平社長)。創業以来、下請け業務を中心に展開してきたが、現在同社の取引はゼロ。新分野を開拓し、成長を続けている。
 倉田社長が同社に入社したのは90年。すでに、月星化成の海外生産が本格化、同社からの受注も減少し始めている時期だった。危機感を募らせていた倉田社長(当時専務)は「オリジナル製品を開発しなければ生き残れない」という信念から自社製品の研究開発へと舵を切る。「周囲からは道楽は辞めなさいと言われた」と当時を振り返る倉田社長。しかし、その決断は当たる。月星化成の仕事はなくなり、現在、同社の事業は、90年から始めた自動車関連産業向けの製品と、弾性舗装材「エコロック」など自社開発製品が両輪だ。
メタボ解消機器を商品化へ
 多くの自社開発製品を手掛けているが、現在、最も注目を集めているのが、熊本大学との共同研究で商品化に取り組む「バイオメトロノーム」だ。
 「バイオメトロノーム」は、特定の波形を持つ微弱電流と温熱を同時に流すことで、熱ショック蛋白質を発現させ、糖尿病・メタボリック症状(メタボ)の改善機器としての開発を目指しているもの。臨床験では内臓脂肪を劇的に減少させる効果が確認されている。
 同製品は、昨年末に医療機器の製造販売に対して義務付けられている「指定管理医療機器・製造販売認証」を取得したほか、3月には九州経済産業局から新連携計画(異分野連携新事業分野開拓計画)に認定され、コントローラーの開発・製造、医療機器販売のパートナー会社と連携して事業化を進めている。
 また、同製品を使った「メタボリックシンドロームおよび軽症2型糖尿病に対する温熱電流同時印加法(MET)による糖代謝改善・内臓脂肪減少効果の検討」が、熊本大学大学院医学薬学研究部倫理委員会にて承認され、6月から熊本市内の医療機関で、40歳から65歳のメタボの男性を対象にしたモニター研究も開始されている。倉田社長は「商品化へ向けて、新たなステージに入ったと認識している。国際展開も視野に、着実に商品化を進めたい」と話している。
カンバン導入で、進化する製造現場
 自動車関連産業向けの製品も受注を伸ばしている。これまで、県工業連合会の輸送機器グループや、自動車産業における生産連携活動「リングフロム九州」に参画するなど、生産拡大に意欲的に取り組んできた。
 マツダ自動車向けのゴムホース生産が月間130万本規模にまで拡大。更なる受注増を目指し、一昨年からアイシン九州の協力や、トヨタ自動車九州が主導する「モノづくり研究会」に参加し、製造ラインに「トヨタ看板方式」の導入を進めている。これらの効果もあり、今年秋からはアイシン九州へ、トヨタ車向けのルーフレールのゴム部品などを納入。量産を開始し、今後の取引拡大への一歩を踏み出した。
 製造ラインの効率性や、製品の品質に対して非常に高いレベルが要求されるトヨタ方式。倉田社長は「月平均130万本のゴムホースを生産しているが、今年2月には過去最高の160万本を生産。にもかかわらず、生産性は向上し、不良率は過去最低を記録した」と製造現場の進化に自信を見せる。自動車関連だけでなく、その他のラインにもトヨタ方式を水平展開することで、会社全体のモノづくりのレペルアップにつなげていきたい考えだ。
普及進む「エコロック」
 95(平成7)年に初の自社開発製品として送り出した「エコロック」。古タイヤの再生チップをリサイクルした商品で、クッション性と透水性を備えた、環境負荷が少なく安全な舗装材として活用されている。
 ゴム材を使用しているため衝撃吸収率はアスファルトの3%に対し、26%。ひざへの負担が少なく、すべりにくいというのが特長だ。屋上緑化に対応した「エコロック」も新たに開発し、首都圏などでの販路拡大を図っている。また、ゴムの断熱性にも注目。屋上に設置することで、冷暖房の効率性が向上するなどの2次的効果も発揮できるという。
 近年、子どもの落下事故防止策として、頭部障害基準(HIC1000)をクリアするエコロックの衝撃吸収率の高さが評価されており、全国の公園など遊具周りでも導入が進んでいる。
常に前進、進化できる組織を
 現在、同社の売上構成は自動車関連部品が6割強、自社開発商品が4割弱という状態。倉田社長は「自動車関連の取引も伸ばしながら、これまで開発してきた自社製品、また、新たな研究開発による新製品の開発で、自社商品の割合を早い段階で5割にまで引き上げることが当面の目標」と話す。「自動車産業での世界レベルの厳しい要求水準に応える生産技術を身につけ、その生産管理を自社商品の開発・製造にいかしていくことで当社独自の“モノづくり”が確立できる。常に前進、進化できる組織でありたい」と抱負を語る。
企業DATA
[所在地] 〒861-3103 上益城郡嘉島町井寺431-21
[TEL] 096-237-0138
[FAX] 096-237-0129
[資本金] 3,000万円
[設立] 1949(昭和24)年8月
[事業内容] 工業用ゴム製品製造、運動靴製造、土木用資材製造販売、電磁波シールド製造
[年商] 49億円(24年8月期)
[従業員] 90人
[関連企業] 鰍ツちや

[採用情報]
現在、登録がありません。
※この記事内容は、くまもと経済EX:2008年7月1日発行分の掲載内容です。