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くまもと経済EX 2009

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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先端バイオ技術で、熊本から世界市場へ
(財)化学及血清療法研究所
新感染症の出現で、製薬・ワクチン業界へ高まるニーズ
 2009年4月にメキシコ、米国等で発生した新型インフルエンザ(ブタ由来インフルエンザA/H1N1)は、ヒトからヒトへと感染が拡大し、6月には、WHO(世界保健機関)が、パンデミック警戒フェーズをフェーズ6に引き上げるなど世界的な大流行となった。感染地域は世界各国に広がり、日本でも感染者の発生や増加を受け、新たな感染症対策が注目されている。
 こうした新しい感染症の出現は、製薬・ワクチン業界へのニーズを高めている。また一方では、これまでに特効薬のなかった分野に対し、新たな選択肢としてバイオ医薬品の重要性も増している。これらを得意分野として製品開発を進めてきたのが(財)化学及血清療法研究所(熊本市大窪1丁目、船津昭信理事長、略称=化血研)。同研究所は、「人体用ワクチン」「動物用ワクチン」「血漿分画製剤」の生物学的製剤分野に特化した研究・開発を続けてきた、同分野では国内トップクラスのメーカーである。
細胞培養インフルエンザワクチンをGSKと共同開発
 化血研は、2009年2月に製薬メーカーのグラクソ・スミスクライン梶i=GSKジャパン)、グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズ(本部 ベルギー、=GSKバイオ)と、新型インフルエンザワクチンの共同開発をすることで基本的な提携方針に合意した。
 今回の提携では、化血研とGSKバイオが所有やライセンス供与を受けている「細胞培養」の技術・ノウハウと、GSKバイオのアジュバント(免疫増強剤)技術を統合し、新型インフルエンザワクチンの製造期間の時間短縮とより予防効果の高いワクチン開発を目指していく。化血研では、2004(平成16)年から国立感染症研究所、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、独立行政法人医薬基盤研究所とワクチンの開発を進めてきた。臨床試験を実施し、有効性、安全性を確認した後、2008年4月に「沈降新型インフルエンザワクチン(H5N1株)」の製造販売を厚生労働省に承認申請した。また、これまでにプレパンデミックワクチン原液を製造し、国家備蓄に貢献している。


船津昭信理事長・所長
ふなつ・あきのぶ/熊本県山鹿市出身、1945年(昭和20年)5月1日生まれの64歳。熊本大学理学部化学科卒。69年(財)化学及血清療法研究所入所。88年第3製造部長、92年理事、97年常務理事、2000年副所長、04年7月理事長・所長就任。趣味はゴルフ、ウォーキング。
独自技術で高い安全性と品質を追求
 1966年にスタートした血漿(しょう)分画製剤の製造では高い安全性と品質を確保。血友病患者の治療に不可欠な血液凝固因子製剤の開発では、世界に先駆けて第\因子のモノクローナル抗体による高純度製法の開発に成功し、血液凝固因子製剤の国内自給を支える主要メーカーとしての地位を確立している。1991年に発売した生体組織接着剤「ボルヒール」は、外科手術を補助する画期的製剤として広範に利用され、献血の有効利用にも貢献している。また、1980年に発売したスルホ化人免疫グロブリン製剤「ベニロン」は、開発当初からの高い有効性と安全性に加え、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病やギランバレー症候群への適応を有し、更なる適応拡大を目指している。また、世界で最初に開発した活性化プロテインC製剤「アナクトC」は先天性プロテイン欠乏症に対する希少疾病用医薬品として使用され、2006年には特定難病疾患である電撃性紫斑病への効能も追加取得した。
菊池研究所を核にバイオ技術で医薬品開発
 化血研は、バイオ技術を生かした医薬品の開発に力を入れている。バイオテクノロジー研究の拠点となる菊池研究所(菊池市旭志川辺)は、1985年に開設、1988年には純国産技術で製造された遺伝子組換え医薬品の第1号となるB型肝炎ワクチン「ビームゲン」の製造を開始している。
 また、事業費50億円超を投じ、菊池研究所内に遺伝子組換えアルブミンの製造工場を建設した。化血研では遺伝子組換え酵母を培養して製造する「遺伝子組換えアルブミン製剤」を開発しており、現在、第U相臨床試験を終了し、第V相に向け準備中。ニューヨーク等の国際的なマーケットで展示するなど、世界に向けた新市場の開拓を進めている。
熊本から世界市場へ挑戦
 新薬の開発は各メーカーがそれぞれの強みを生かした共同研究・開発が主流となっている。化血研ではこれまで生物学的製剤の分野で磨いてきた最先端の技術を武器に、国内外の企業や研究機関との共同研究や技術提携をさらに進めている。現在承認申請中の3種混合ワクチン「MMR-U」は米国メルク社との共同開発。エイズウイルス(HIV)感染症の治療薬開発のため、英国に続いてヒト化抗HIVモノクローナル抗体の米国での第T相試験を実施中。アステラス製薬との共同開発が進行中の抗オステオポンチン抗体を使った関節リウマチ治療薬は、欧州での第T相を終了し、現在第U相を実施中であり、日米での治験も開始する。それに合わせ、菊池研究所内で第V相用治験薬の製造施設の設計を完了した。「社会からの信頼を大切にし、技術集団としての高いレベルを保ち続け、熊本から世界に通用する医薬品の開発に挑戦していく」と語る船津昭信理事長。熊本に根を張り、世界市場に向け挑戦を続けている。
企業DATA
[所在地] 〒860-8568 熊本市大窪1丁目6-1
[TEL] 096-344-1211
[FAX] 096-345-1345
[資本金] 21億円
[設立] 昭和20年12月
[事業内容] 医薬品等の製造と頒与、予防医学研究・調査
[年商] 333.7億円(平成21年3月期)
[代表者] 船津昭信(理事長・所長)
[従業員] 1,663人(平成21年4月現在、パート含む)
[URL] http://www.kaketsuken.or.jp/
[出先] 菊池研究所、阿蘇支所、東京事務所、東京・大阪・福岡営業所、長崎出張所、配送センター

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2009年7月1日発行分の掲載内容です。