トップ Companies くまもと経済EX 2009 創業40年、地域活性と人づくり構想始動
くまもと経済EX 2009

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

■医療・医療関連・教育  ■飲食・サービス 
■金融・保険・卸・流通・小売  ■情報通信・ICT関連  ■電力・運輸・建設・不動産  ■製造・農業 
製造・農業
すべての出会いに感謝を込めて
創業40年、地域活性と人づくり構想始動
農業生産法人 泣Rッコファーム
たまごとバナナの不思議な関係
 「コッコのたまごはとりたてでー・・・」テレビやラジオから軽快に聞こえてくるこの曲は、今年創業40周年を迎えた農業生産法人泣Rッコファーム(菊池市下河原、松岡義博)のテーマソングだ。一度聞いたら耳に残るその曲調は、子供たちもすぐに覚えて口ずさんでしまうほど。短い曲だが、その歌詞はコッコファームをズバリ表現し、紹介している。「コッコのたまごはとりたてで」「バナナもちょっぴり実ってる」「不思議な不思議なコッコファーム」。たまごとバナナの組み合わせは、確かに不思議な印象を持つ。
 コッコファームに観光バナナ園が開園したのは今から9年前。当時、突如現れたバナナの木々に従業員も驚き「なぜバナナなんだ」と不思議に思った。しかし、松岡社長には考えがあった。当時さかんに言われていた「循環型農業」。養鶏を営む中で毎日発生する卵の殻と鶏ふんが、バナナの成長に適していた。また、「いつでもお客様に楽しんでいただける仕掛けをしたい」という思いがあった。「熱帯で育つバナナを、一定規模で栽培している場所は日本でもそうそう見当たらない。温室栽培で一年を通じて成長を楽しめるバナナは、きっと消費者の方に注目いただけるのではないか」。バナナの樹には、来園者が収穫までの一年間を占有できるよう一本一本にオーナーを募った。たちまち木々にはオーナーの名札が連なり、中には「食育」の観点から近くの保育園児の名前も並んだ。「地域の来場者の方に楽しんでいただければ」という思いからすれば十分な成果だったが、反響はそれに留まらなかった。05年には愛知万博から、そして昨年は吉永小百合・竹中直人主演の映画「まぼろしの邪馬台国」からオファーを受け、「コッコのバナナ」は、思いもよらず全国区となった。


松岡義博社長
まつおか・よしひろ/1949年1月30日生まれ、60歳。菊池市の農家に4人兄弟の長男として生まれ、中学校卒業と同時に農業の専門学校(熊本県経営伝習農場)に1年間修学し、農業後継者としての道を歩み始めたが、中山間地での農業の難しさに触れ離農し、横浜へ上京する。11種類の職を転職した後、田舎の自然の素晴らしさを改めて実感し、20才の時「過疎こそ宝」を合言葉に故郷に帰り現在に至る。
 06年に高齢者雇用開発コンテストで優秀賞、県農業コンクール大会でグランプリとなる個別経営部門賞を受賞、その後の全国大会でもグランプリを受賞。第1回再チャレンジ支援功労者表彰を受賞している。09年6月から日本農業法人協会会長に就任。
原点は「温かいたまごを直接お届けしたい」
 「生まれたばかりの温かいたまごをお届けしたい」。都会での就労から一転、養鶏業に踏み出した時の松岡社長の気持ちだ。その気持ちは、現在も約122人の従業員に、そして会社運営の柱として連綿と受け継がれ共有されている。
 「自分でつくったものに自分で値段をつけて直接消費者に届ける」。地域の市場では生産者と消費者がふれあい、安心してそれを買っていただくことが大切と考えていた松岡社長。「責任を持って届けたい生産者と、誰がどう作ったかを理解したうえで、安心して食を楽しみたい消費者との相互理解の場」を形にしたのが同社の直売所「ふれあい館」だ。生産したたまごをスーパーなどに流通させるのではなく、独自に販売する手法は、当時決して“主流”ではなく苦労した。しかし、規格にとらわれず朝取りのたまごをダンボールに入れて販売する売り方がヒットし、たちまち評判を呼んだ。今でも「朝どりたまご・3Kグラム」が人気商品で、年間47万人を超える来場者が同館を訪れる。「朝どりたまご」以外にも館内では、加工商品や惣菜、同社のたまごを使った菓子工房のほか、近隣の農家が生産物を持ち寄った野菜販売コーナーなども充実。「たまごかけ醤油」や「バナナで酢」などの自社商品なども取り扱っている。
 直売所「ふれあい館」の運営をはじめて10年。そこで蓄積したノウハウは、新たな施設運営に反映されようとしている。
来年完成目処に新施設
 同社から車で5分ほどの同市森北に物産館やレストランなどを併設した複合施設のオープンを計画しているのだ。
 場所は国道325号沿い、コンビニエンスストアのサンクス菊池森北店東側の約8000uの土地。2000年から松岡社長が構想していたもので「人づくり」と「農業再生」を運営指針とした施設。詳細は現在最終検討中だが、物産館やレストランのほか、会議室や小さい間取りのインキュベーション型貸しオフィスなどを設置する予定。特に物産館には地域の生産者が自らの製品を持ち込み、自ら販売することができるコーナーや、加工することで一次産品に付加価値をつける工夫などを試みる予定。創業当時の、そして直売所を始めた頃の思いを新たな売り場作りに生かしていく。
 施設は来年始めには着工し、2010年度を目処に完成を目指している。松岡社長は「菊池の情報を全国に発信する拠点にしたい。また、周辺農家や地域が活性化するような仕掛けで、農業の振興につながるような取り組みを目指したい」と意気込む。
日本農業法人協会会長に就任
 2011年には事業承継を打ち出す松岡社長。一方で、今年6月には全国の農業法人約1700社で組織する(社)日本農業法人協会(東京都千代田区)の会長に就任した。同協会は農業法人に関する経営情報の収集や提供、農業経営政策への提言などを目的に99年に設立されたもの。
 「農業法人を広く知っていただくとともに、地方と中央の掛け橋となれるよう努力したい。全国で実践されている地域活性の知恵や情報を拾い上げ、過疎化が懸念される地域へ還元していければ」と話す。新施設の建設と次世代へのバトンタッチで、新たな局面を迎えるコッコファームだが、その取り組みは全国から注目が集まっている。
企業DATA
[所在地] 〒861−1302 菊池市下河原2818
[TEL] 0968-24-0007
[FAX] 0968-24-5056
[資本金] 1000万円
[設立] 1995年10月
[事業内容] 養鶏及び農産物生産販売、食品加工販売、人材育成事業(実農学園)
[年商] 23億5200万円(平成20年度実績)
[代表者] 松岡義博社長
[従業員] 122人
[URL] http://www.cocco-farm.co.jp/

[採用情報]
現在、登録がありません。
※この記事内容は、くまもと経済EX:2009年7月1日発行分の掲載内容です。