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くまもと経済EX 2010

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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先端バイオ技術で、   熊本から世界市場へ挑戦
(財)化学及血清療法研究所
4月1日付で一般財団法人へ移行
 (財)化学及血清療法研究所(熊本市大窪1丁目、船津昭信理事長、略称=化血研)は、公益法人制度の改革に伴い2010年4月1日付で、財団法人から一般財団法人へ移行した。2009年10月に内閣府公益認定等委員会に一般財団法人へ移行認可を申請しており、このほど認可が下りたもの。化血研では、今回の移行を機に2010年5月に、熊本県、熊本市など4団体・法人に総額3億1500万円を寄附した。寄附先の内訳は県1億円、熊本市1億円に熊本大学(本部・医学部)1億1千万円、(財)肥後医育振興会500万円。船津理事長は、「今後は公益法人としての指導監督を離れ、より地域に根ざし、また信頼される民間企業として事業展開を図っていきたい」と語る。


profile
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船津 昭信 理事長・所長
ふなつ・あきのぶ/熊本県山鹿市出身、1945年(昭和20年)5月1日生まれの65歳。熊本大学理学部化学科卒。69年(財)化学及血清療法研究所入所。88年第3製造部長、92年理事、97年常務理事、2000年副所長、04年7月理事長・所長就任。趣味はゴルフ、ウォーキング
新型インフルエンザワクチンの約4割強を供給
 2009年4月にメキシコ、米国等で発生した新型インフルエンザ(A/H1N1型)の出現と世界的な大流行は、感染症を予防する「ワクチン」の必要性と社会の認知度を一躍高めることとなった。化血研は、国内ワクチンメーカー4社の中の1社として、ワクチンメーカーとしての供給責任を全うすべくフル稼働の体制で臨み、国からの製造依頼に応え、国内で2010年3月末までに準備した5400万回接種分の約4割強を供給するに至った。
 化血研では、病原性が強く、流行した際の被害がより大きいと予想されている「H5N1鳥インフルエンザワクチン」の開発を進めており、2009年8月には英国製薬大手のグラクソ・スミスクライン社(GSK)と、新型インフルエンザワクチンの共同開発契約を締結した。従来の鶏卵培養に代えて、新たに細胞培養法を用いることで迅速かつ大量供給を可能とし、更に免疫増強剤を添加することによって、少ない投与量で予防効果の高いワクチン開発を目指している。
独自技術で高い安全性と品質を追求
 1966年にスタートした血漿(しょう)分画製剤の製造では高い安全性と品質を確保。1980年に発売したスルホ化人免疫グロブリン製剤「ベニロン」は、開発当初からの高い有効性と安全性に加え、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病やギランバレー症候群への適応を有し、2010年1月にはチャーグ・ストラウス症候群・アレルギー性肉芽種性血管炎への効能追加が承認された。1991年に発売した生体組織接着剤「ボルヒール」は、外科手術を補助する画期的製剤として広範に利用され、献血の有効利用にも貢献している。血友病患者の治療に不可欠な血液凝固因子製剤の開発では、世界に先駆けて第\因子のモノクローナル抗体による高純度製法の開発に成功し、血液凝固因子製剤の国内自給を支える主要メーカーとしての地位を確立している。
 また、世界で最初に開発した活性化プロテインC製剤「アナクトC」は先天性プロテイン欠乏症に対する希少疾病用医薬品として使用され、2006年には特定難病疾患である電撃性紫斑病への効能も追加取得した。
菊池研究所を核にバイオ技術を活かした医薬品開発にチャレンジ
 化血研は、バイオ技術を活かした医薬品の開発に力を入れている。バイオテクノロジー研究の拠点となる菊池研究所(菊池市旭志川辺)は、1985年に開設、1988年には純国産技術で製造された遺伝子組換え医薬品の第1号となるB型肝炎ワクチン「ビームゲン」の製造を開始している。また、2005年には菊池研究所内に遺伝子組換えアルブミンの製造工場を建設した。化血研では遺伝子組換え酵母を培養して製造する「遺伝子組換えアルブミン製剤」を開発しており、現在、第U相臨床試験を終了し、第V相に向け準備している。
熊本から世界市場へ
県庁で寄附金贈呈式を行った
 化血研では国内外で10を超える開発テーマが現在進行している。臨床治験が終了し申請中のものが、細胞培養日本脳炎ワクチン、動物用ではMD/ND組換えベクターワクチンなどで、早期の製品化に大いに期待している。また臨床治験中のものは6製剤ほどあり、中でもDPT(ジフテリア・破傷風・百日ぜき)に不活性化したポリオワクチンを加えたDPT/IPV(4種混合ワクチン)は、第U相を終え第V相に入った。血友病インヒビター患者に対する新規バイパス製剤であるMC710は第U相を実施中。エイズウイルス(HIV)感染症の治療薬開発のため、ヒト化抗HIVモノクローナル抗体の米国での第T相試験を実施中である。
 グローバル企業の市場参入等、厳しい競争環境を勝ち抜いていくため、時宜に応じ、海外メーカーとも適切なアライアンスを構築しながら事業を展開。また、アステラス製薬等、国内複数のメーカーと抗体医薬分野の共同開発を進めている。「技術集団としての高いレベルを保ち続け、これまで生物学的製剤の分野で磨いてきた最先端の技術を武器に、熊本から世界に通用する医薬品の開発に挑戦していく」と語る船津理事長、世界市場に向け挑戦を続ける。
企業DATA
[所在地] 〒860-8568 熊本市大窪1丁目6-1
[TEL] 096-344-1211
[FAX] 096-345-1345
[設立] 昭和20年12月
[事業内容] 生物学的製剤の研究・開発並びにそれを応用した医薬品の製造・供給
[年商] 395.9億円(平成22年3月期)
[代表者] 船津昭信(理事長・所長)
[従業員] 1695人(平成22年4月現在、パート含む)
[URL] http://www.kaketsuken.or.jp/
[出先] 菊池研究所、阿蘇支所 東京事務所 東京・福岡営業所 長崎出張所配送センター

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2010年7月1日発行分の掲載内容です。