熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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金融・卸・飲食

企業密着・家庭密着の姿勢で地域社会を活性化

熊本信用金庫

“足を使った”経営相談

　「景気が低迷する中、最も厳しい局面に立たされているのが信用金庫のメーンの顧客でもある地元の中小・零細企業。こういう厳しい時こそ、信用金庫の出番でもある。地元のお客さまに安定した資金を提供していくことで地域金融、中小企業金融に貢献したい」と吉本理事長。
　同金庫では、地域経済の活性化に向け“足を使った”経営相談業務の強化を進めている。吉本理事長は「お客さまのより身近な存在となれるよう、地域密着をさらに深めた企業密着・家庭密着の姿勢を持たなければ」と力を込める。職員一人ひとりが汗をかき、足を使って情報を集め、顧客のより細かな要望を汲み取り、提案する「信用金庫ならでは」の相談業務の強化に力を注ぐ。
　従来からの小規模事業者や個人事業主などの顧客層に加え、信金中金などとも連携を強化。新規市場の開拓も進めている。県内４信金、県内大学・高専と共同で推進する「コラボ産学官」での取り組みでは、定期的な事例研究発表会などを通し、顧客間のビジネスマッチングを支援することで、地元企業のアイデアや技術を売上に繋げるためのサポート体制を構築している。
　また、地元4信金とは、シンジケートローン（協調融資）などでも積極的に連携。地域の中規模企業などへの経営支援にも意欲的に取り組んでいく方針だ。

「傷害保険つき定期積金」が大ヒット

　顧客のニーズに合わせた多彩なローン、定期預金商品を展開する同金庫。昨年5月に発売した「傷害保険つき定期積金“安心ナビ”」は、約25億円を集める大ヒット商品となった。同商品は、将来に向けた目的積立額を傷害保険がカバーするというもの。「5年もの」「10年もの」の2種類で、保険料の負担なく、子どもの教育資金、リフォーム資金、老後資金などライフプランに合わせた財産形成が可能な商品となっている。
　他にも高付加価値な預金商品として、18歳以下の子どもの数によって金利を優遇する多子家族応援定期預金　希望の星「子宝」や、年金受給者向けの定期預金「スーパー寿」、“団塊世代”を対象に上乗せ金利を適用する団塊世代応援定期「夢つづき」などの各種預金商品が多くの顧客に支持されている。また、個人年金や終身保険の販売にも力を注ぎ、昨年度は約20億円を販売した。

「現場力」「目利き力」向上目指す

　「Face to Face」のきめ細やかな顧客対応を最重視する同金庫では、「現場力」「目利き力」の向上を目指した人材育成に取り組んでいる。「組織の一員である現場のスタッフの能力が向上することで、組織全体が強くなる」と吉本理事長。各種研修に実際の得意先を想定したロールプレイングを組み込むことで、コミュニケーション能力の向上を図っている。
　また、支店長の立候補制も導入。意欲のある役職員を積極採用することで、現場の活性化に繋げている。

10年3月期決算は増収・黒字転換

　10年3月期決算は、経常収益が前年比1.1％増の34億5500万円、経常利益が7400万円（前期は7億200万円の赤字）で、2年ぶりの増収・黒字転換を達成した。貸出先の経営支援、再生支援などに積極的に取り組み、不良債権処理費用が前期比81.8％減と大きく減少し黒字転換の要因となった。本業のもうけを示すコア業務純益は26.5％増の3億7600万円。自己資本比率は1.28ポイント上昇し、9.80％となるなど、安定した数字を確保している。

くましん3訓“変革”“誠実”“感謝”

　同金庫は1923（大正12）年8月、当時の高橋守雄・熊本市長を中心に政財界有志が発起人となり設立された。「地域社会に密着し、金融業務を通して企業と家庭、そして郷土くまもとの繁栄と日本経済の発展に寄与する」を経営理念に事業を推進してきた。
　吉本理事長は「お客さま一人ひとりの顔が見える、地元に根ざした営業活動こそが信用金庫の最大の強み。地域が良くなっていかなければ、信金も良くなっていかない。まさに当庫は、地元・熊本と一心同体。地元の資金を地元で使っていただくという信用金庫本来の役割を通して、地域社会の活性化に幅広く貢献していきたい」と意欲を語る。
　“変革”“誠実”“感謝”のくましん3訓を実践する人材育成を通し、地域との接点を強化しながら、これからも地元企業・個人事業主のパートナーとしての役割を果していく。

profile
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吉本國勝理事長
よしもと・くにかつ／宇城市松橋町出身。1941（昭和16）年12月19日生まれ、68歳。熊本商業高校卒。60年熊本信用金庫入庫。業務部長、本店営業部長などを経て、95年理事、01年6月常務、03年6月第10代目理事長就任。趣味はジョギング、ゴルフ

企業DATA

[所在地]　〒860-0808　熊本市手取本町2-1

[TEL]　096-326-2211

[FAX]　096-322-7219

[設立]　［創業］　1923（大正12）年8月

[事業内容]　信用金庫業務

[年商]　［預金残高］　1403億2300万円（09年度期平均）　［貸出残高］　791億5700万円（09年度期平均）

[代表者]　理事長・吉本國勝　専務理事・品川良照　常務理事・光永昭久　常勤理事・井芹亮介、松本秀幸、真子秀樹、吉村敏幸　常勤監事・永松恵

[従業員]　253人

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※この記事内容は、くまもと経済ＥＸ：2010年7月1日発行分の掲載内容です。