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最新型放射線がん治療装置「ノバリスTx」が稼働 世界最高水準の放射線治療施設へ
(医)社団人優会 熊本放射線外科
 依然、不治の病としてのイメージが根強い病気「がん」だが、医療技術の進歩により「治る病気」へと近づきつつある。熊本市出水7丁目にある医療法人社団人優会・熊本放射線外科(古後佳生理事長・院長)は、国内のみならず世界からも注目を集める放射線治療の先駆的施設となっている。同院が現在そう呼ばれる所以は、これまで数々の最先端医療を取り入れつつ治療実績を伸ばしているだけでなく、5月6日からは最新型放射線がん治療装置「ノバリスTx」を使った治療を開始したためだ。
 ノバリスTxとは頭部や頸部だけでなく、脊椎、肺、肝臓、前立腺などの体幹部にも使用できる定位放射線治療装置。同院が2005年5月に導入して現在も稼働している「ノバリス・シェープビーム・サージェリーシステム(通称・ノバリス)」の後継機となるもの。放射線を病変部に対して多方向からピンポイント照射できるなど従来機の特徴を継承するとともに、治療範囲の拡大、治療精度の向上、治療時間の短縮を実現しているという。
 治療範囲については22×40pの広い放射線照射野を持つことで、より大きな病変部の治療を実現。また、より高性能となった患者位置決め技術や放射線ビーム成形技術を採用することで、病変部への的確な放射線照射が可能となり、周辺の正常組織へのダメージを最小限に抑えることに成功している。さらに、強力なリニアックの搭載で放射線ビームの高出力化を実現し、全自動ロボット寝台の採用で患者のポジショニングをより正確にした。古後院長は「これらの特徴は正確な治療と治療時間の短縮につながり、患者さまの予後やQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の改善に役立つのでは」と話している。
 なお今回稼働した「ノバリスTx」は、08年に国内で初めて導入を決めており、実際の導入は国内3例目となった。今後はすでに稼働している「サイバーナイフU」「ノバリス」とともにそれぞれの特徴を活用した最先端の放射線治療を提供していく方針で、上述の3機器がそろった医療施設の誕生は国内初となる。
安全面に配慮した“人に優しい”医療施設
 「Tx」の導入はさらなる治療成績向上を目指した結果でもある。また同院では「Tx」の導入に伴せて、新治療棟を建設した。新治療棟は鉄筋コンクリート造り一部2階建て、延べ床面積462u。厚みのあるコンクリートの採用や建物全体で約200トンの鉄板を使用するなど、患者の安全面に最大限配慮した造りとなっている。 放射線治療に関してはスタッフ教育も盛んに行っている。医師に対しては大屋夏生熊本大学放射線治療学教授を、放射線技師に対しては荒木不次男同大大学院放射線技術学教授を非常勤スタッフとして毎週招き、それぞれ指導を受けながら慎重な治療に当たっているという。また魚住秀昭魚住クリニック院長、千原宏同クリニック技師長を顧問として、定期的な放射線安全委員会を開催。ハード、ソフト両面で法人名「人優会」が表現する“人に優しい”医療を行っている。
世界トップクラスの治療実績。さらに重要性が増す医療拠点に
 同院の治療体制は九州内のみならず広く西日本地域の患者・医療機関からの評価を得ている。特に従来機「ノバリス」の症例数は05年の導入以来堅調な伸びを見せ、2010年7月時点では通算2900症例となっている。この数字は06年度時点でノバリス開発元のブレインラボ社(独)から世界最多症例を認められ表彰を受けたことからも分かるように、世界でもトップクラスの症例数であると言える。ノバリスTx導入の経緯について「頭頚部と体幹部に使用できる従来機ノバリスから、より複雑な病態に対応できるようになり、さらに治療時間も短縮化された。より多くの患者を治療することができる夢の装置だと感じている。従来機による治療実績を重ねたことで新型ノバリス(Tx)の導入が実現できた」と話す古後院長。「九州新幹線の全線開業で、県外からの患者さまが増えてくるのでは」とも話しており、世界最高水準の医療施設は今後、医療拠点としての重要性を増すことになる。
 古後院長は「定位放射線治療の登場で、がんが脳転移した場合でも脳転移が原因で死に至ることがほとんど無くなった。さらに、放射線治療も装置の高性能化により外科手術に近いものになっていく。治療の安全性も向上してきており、これからのがん治療にも期待が持てる」と語った。
profile
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古後佳生 理事長・院長
こご・かせい/菊池市出身、1963(昭和38)年3月17日生まれの47歳。熊本高校―熊本大学医学部卒。県内主要医療機関で勤務後、01年に医療法人社団人優会設立、熊本放射線外科開業。脳神経外科認定医。海外で放射線治療装置「ガンマナイフ」「サイバーナイフ」「ノバリス」の研修経験がある
[スタッフ]〈医師〉古後佳生(理事長・院長)、奥田智子、大屋夏生(非常勤・熊本大学放射線治療学教授)、魚住秀昭(顧問・魚住クリニック院長)〈医学物理士・品質管理士〉下東吉信〈放射線技師〉富永弘史、兼武渚、川崎啓一、川上瑞未、坂田潤一、吉村さおり、岩下雄紀、荒木不次男(非常勤・熊本大学大学院放射線技術学教授)、千原宏(顧問・魚住クリニック技師長)、宮本美保子(非常勤)、ほか大学院生4人
企業DATA
[所在地] 〒862‐0941 熊本市出水7-90-2
[TEL] 096-370-0712 [IP] 050-5519-7100
[FAX] 096-214-3712
[設立] 2001年7月
[事業内容] 脳神経外科・放射線科・外科 [診療日] 平日(月曜日〜金曜日)完全予約制 [診療時間] 10:00〜18:00
[URL] http://www.radiosurgery.or.jp/
[E-Mail] ck2novalis@radiosurgery.or.jp

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2010年7月1日発行分の掲載内容です。