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くまもと経済EX 2006

熊本の明日を拓く未来創造企業 100の戦略

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最先端のバイオ技術で世界に挑戦
(財)化学及血清療法研究所
大学発ベンチャーの“元祖”
船津昭信 理事長・所長
 経済のグローバル化を背景に、学術研究の成果をより直接的に産業界で役立てようとする動きが国内でも活発化、ここ数年「大学発のベンチャー企業」という言葉を耳にするようになった。(財)化学及血清療法研究所(熊本市大窪1丁目、船津昭信理事長、略称=化血研)は、言わば熊本における大学発ベンチャーの“元祖”である。
 化血研のルーツは、1926年(大正15年)、熊本医科大学の学長だった山崎正董博士を理事長に学内に設立された(財)実験医学研究所。同研究所は、微生物学・免疫学・血清学の研究成果としてワクチン、抗血清、診断抗原などを製造し、伝染病の予防、治療、診断に貢献、高い評価を受けていた。
 同研究所は太平洋戦争末期、1945 年(昭和20 年)7 月1 日の熊本大空襲で壊滅、その機能を失ったが、同年12 月、熊本医科大学教授(のちの学長)だった太田原豊一博士の首唱で、同医科大、特に微生物学教室を中心に有志が集まり(財)化学及血清療法研究所を創設、戦争の災禍で中断された研究所は蘇った。以来、化血研は、「人体用ワクチン」「動物用ワクチン」「血漿分画製剤」の生物学的製剤分野に特化した研究・開発を続けてきた。
独自技術で安全性と品質を追求
化血研本所。約147.000uの敷地に本館、血漿分画製剤製造棟、ワクチン製造棟、管理棟、厚生会館などがある。05年には新たに新製剤棟(NR棟)が完成した。
 1966年にスタートした血漿分画製剤の製造では高い安全性と品質を確保、血友病患者の治療に不可欠な血液凝固因子製剤の開発では、世界に先駆けて第\因子のモノクローナル抗体による高純度製法の開発に成功し、血液凝固因子製剤の国内自給を支える主要メーカーとしての地位を確立した。化血研の主力製剤のひとつで1991年に発売した生体組織接着剤「ボルヒール」は、外科手術を補助する画期的製剤として広範に利用され、献血の有効利用にも貢献している。また、1980年に発売したスルホ化人免疫グロブリン製剤「ベニロン」は、開発当初からの高い有効性と安全性に加え、川崎病、ITP(特発性血小板減少性紫斑病)やGBS(ギランバレー症候群)への適応を有し、更なる適応拡大を目指している。
100億超投じ遺伝子組換え製剤工場を建設
バイオテクノロジー研究の拠点「菊池研究所」。総事業費100億円超を投じる遺伝子組換えアルブミン製剤工場の建設プロジェクトが進んでいる。
 化血研では、免疫学、微生物学、血液学、獣医学、生化学などの高度な知識をベースに、バイオ技術を駆使した先端的な研究・開発にも意欲的に取り組んできた。
 1985年にはバイオテクノロジー研究の拠点となる菊池研究所(菊池市旭志川辺)を開設、1988年には純国産技術で製造された遺伝子組換え医薬品の1号となるB型肝炎ワクチン「ビームゲン」の製造を開始している。
 現在、化血研では菊池研究所内に総事業費100億円超を投じ、10年計画で遺伝子組換えアルブミンの製造工場の建設を進めている。血液中に含まれる蛋白質のアルブミンを製剤化したアルブミン製剤は、火傷や肝臓病、腎臓病などに使われ、国内では年間400万本が必要とされている。しかし、血液を原料とする従来の製法では国内自給率は50%程度に止まっていた。化血研では米国のZLBベーリング社と共同で、遺伝子組換え酵母を培養して製造する「遺伝子組換えアルブミン製剤」を開発。現在、第U相臨床試験に入っており、2009年頃と予想される本格稼動後は年間100万本の供給を目指している。これは現在、血液を材料に作られるアルブミンの国内生産量の半分に相当する。
熊本から世界市場へ挑戦
 国境を越え激烈な市場獲得競争が繰り広げられる製薬業界。新薬の開発は各メーカーがそれぞれの強みを生かした共同研究が主流となっている。化血研では生物学的製剤の分野で磨いてきた最先端の技術を武器に、国内外の企業や研究機関との共同研究や技術提携を積極的に進めている。現在承認申請中の3種混合ワクチン「MMR-U」は米国メルク社との共同開発。他にもドイツのカイロンベーリング社から導入した組織培養インフルエンザワクチンの研究など10テーマを超える共同研究・開発が現在進行中だ。
 「化血研は生物学的製剤の分野では国内トップクラスに成長した。しかし、今後は世界が相手となる。海外市場で通用する製剤をいくつ生み出せるかで化血研の将来が決まる。世界に通用する製剤を、ここ熊本で作れるというところをお見せしたい」と船津昭信理事長。
 昨年、化血研は創立60周年を迎えた。大学発ベンチャーの“元祖”は、創立当時の燃える情熱をそのままに、世界市場を見据えた新たな挑戦を続けている。
企業DATA
[所在地] 〒860-8568 熊本市大窪1丁目6-1
[TEL] 096-344-1211
[FAX] 096-345-1345
[資本金] 基本財産 21億円
[設立] 昭和20年12月
[事業内容] 医薬品等の製造と頒与、予防医学研究・調査
[年商] 326.5億円(平成18年3月期)
[代表者] 船津昭信(理事長・所長)
[従業員] 1.569人(平成18年4月1日現在、パート含む)
[URL] http://www.kaketsuken.or.jp/
[出先] 菊池研究所、阿蘇支所、東京事務所、東京・大阪・福岡営業所、長崎出張所、配送センター

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※この記事内容は、くまもと経済EX:2006年7月1日発行分の掲載内容です。