トップ Companies くまもと経済EX 2007 船外機生産は年間15万台体制、 優秀な人材づくりと地域貢献に磨き
くまもと経済EX 2007

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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船外機生産は年間15万台体制、 優秀な人材づくりと地域貢献に磨き
ヤマハ熊本プロダクツ(株)
世界トップシェアの「ヤマハブランド船外機」を180カ国へ
本社工場の外観(=八代市新港町4丁目)
 小型船のエンジンとして世界のあらゆる地域で使われている「ヤマハブランド」の船外機。ヤマハ熊本プロダクツ(株)は、年間15万台の生産体制の中で、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの船外機を生産し、全世界180カ国へ輸出している。現在、同社で生産する機種は19機種を基本に500種類、シェアは世界のトップを占めるなど、世界が認める船外機のオンリーワン企業として、その地位を確立している。
 同社は2005(平成17)年9月から4ストロークエンジンの生産も開始、2006年で年間1万8千台を生産。環境規制に対応した4ストロークエンジンは、同社の主力製品である2ストロークエンジンに比べ部品点数が多く、構造上、気密性や作動の確実性が要求される。そのため高度な製造技術が必要となるが、環境規制が高まっている欧州を中心にその需要は、今後さらに拡大することが予想される。
 同社にとって操業9年目にあたる07年。今後もさらなる高品質・高性能な製品づくりを目指していく。
TPM活動で「低コスト・高品質の製品づくり」
環境規制に対応した4ストロークエンジン
 「エンジンの4ストローク化が進む状況の中、年間生産台数を維持し、利益を確保していく必要がある。そのためには、低コスト・高品質の製品づくりが第一」と話す吉村社長。
 「低コストで高品質」は、「モノづくり」の現場では必ず求められることだが、そのために同社では2006年1月から3カ年を「事業構造変革期」と位置づけ、TPM活動を実践している。現場のロスを無くすことで生産性の向上またコスト削減を徹底。その結果、30%の生産効率アップにつながった(吉村社長)という。
 鋳造から加工、塗装、組み立て、出荷までの一貫ラインを構築する同社。今後もワンランク上の製品づくりを目指す。
船外機部品の現地調達を促進
 約4500の部品で構成する船外機。同社は現在、船外機の直接材料の多くを東海地方の企業から調達しているが、近年は物流コスト削減のため、地元企業からの調達を促進。これはTPM活動の一環でもある。さらには、熊本県などが主催する商談会に積極的に参加し、コスト競争に勝ち残っていく考えだ。「地場企業との積極的なコミュニケーションを図り、部品の細かいニーズに対応できるのも現地調達のメリット。さらに地場の機械工業系企業の育成や発展にもつながる」と吉村社長。地場企業の育成に努めるなど、地域に目を向けた取り組みにも余念がない。
企業奨学金制度を創設、モノづくりを支える人材育成へ
製造技術課  植里真一さん(24歳)
TPM推進事務局  上田輝美さん(24歳)
 同社は昨年4月、県内大学や短大、高専の学生を対象に企業奨学金制度を創設した。入社義務や返還義務が伴わない給付形式であることが特徴で、国内製造業における人材の確保、育成を行っている。 
 また、社内的にも「公平で透明性の高い人事制度」を導入、仕事に対して熱意のある人材を全面的にバックアップしている。「風通しの良い職場環境が企業文化として根付いている」と吉村社長。
 そんな同社の若手社員2人に職場や仕事に関して生の声を聞いた。

製造技術課  植里真一さん(24歳)
 機械設備の導入など生産準備の業務をしています。大きな仕事を任されることもあるため、仕事の意味をしっかりと理解し、責任感をもって業務に取り組んでいます。今年3月から3カ月間、グループ会社のヤマハマリン􈞊で研修し、そこでレベルの高い仕事を経験することが出来ました。この貴重な体験を今後の業務に生かしていきたいと考えています。(入社4年目、熊本県立技術短期大学校卒)

TPM推進事務局  上田輝美さん(24歳)
 職場の業務改善を促進させるサポートをしています。製品を世界180カ国に輸出している「グローバルな企業」というところに魅力を感じ、入社を決めました。失敗もありますが、周りの先輩からフォローをいただき、風通しが良く、働きやすい職場環境だと実感しています。責任感のある仕事ですが、TPMに関して社員の意識が変わってきた時には大きなやりがいを感じています。(入社3年目、県立長崎シーボルト大学卒)
障害者の社会復帰を支援、地域貢献にさらなる磨き
吉村 強 社長
 同社はこのほど、八代市沖町の精神障害者社会復帰施設「ワークショップ八代」と業務委託契約を結んだ。
 同社で製造している鋳造部品の仕上げ作業の一部を業務委託するもので、障害者の社会復帰支援を目的としている。業務委託にあたっては、昨年11月から施設指導員の教育や作業所レイアウトの検討、作業計画立案、安全・品質の指導を始めるなど準備を進めてきた。また、委託作業の選択に関しては、障害者が段階的に技術習得できるよう工程が短く体力的な負担にならず、納期調整が容易な軽作業とし、障害者の習熟度に合わせてさらに発注量を拡大していく考え。ワークショップ八代では作業場に常時5人を配置し、来年には2千個を月間生産目標としている。
 吉村社長は「障害者の方には社会に貢献しているという意識をもって作業に取り組んでいただき、社会復帰への第一歩につなげてほしい」と話している。
 また、同社は昨年1月、社内クラブの茶道部を設立、地元の老人ホームで茶会を開くなど地域とのコミュニケーションを深めている。
 これらの取り組みは、他社に率先して始めた企業奨学金制度も含め、同社が力をいれている地域社会への貢献活動の一環だ。「事業を展開していく以上、地域貢献は1つの企業としての社会的責任でもある」。吉村社長はこう語る。



吉村 強 社長
よしむら・つよし 和歌山県串本町出身。1949(昭和24)年3月14日生まれの58歳。上智大学理工学部卒。72年ヤマハ発動機􈞊入社、97年ヤマハマリン􈞊ディーゼルエンジン開発部門部長。04年5月からヤマハ熊本プロダクツ􈞊に出向、同6月取締役製造部長、05年3月から現職。趣味はゴルフ、カメラ、ウォーキング、温泉巡り。「野球はタイガース、サッカーはジュビロ磐田」(本人談)
来年操業10周年、「グローバル企業」としてさらに前進
 世界トップシェアを誇るヤマハブランド船外機だが、同社が製造するヤマハ船外機9.9〜15馬力の輸送用梱包仕様が、このほどアメリカ・シカゴで開かれた「2006ワールドスターコンテスト」で、協会会長賞銅賞を受賞した。同コンテストは、世界包装機構(=WPO)の主催で、包装仕様の簡易性や経済性、環境対応などが審査項目となっており、包装技術では最も権威あるコンテスト。今回のコンテストでは、世界35カ国265のエントリー製品の中から130製品が選出され、その中から特に優れているものに金・銀・銅からなる会長賞が送られた。今回の受賞は、同社が地球環境保全の一環として取り組んできた結果でもあり、また世界から認められた瞬間だ。
 2008年は節目となる操業10周年の年。世界が認める船外機のオンリーワン企業として、また、「グローバル企業」としてさらなる飛躍が期待される。
企業DATA
[所在地] 〒866‐0034 八代市新港町4‐8
[TEL] 0965(37)2121
[FAX] 0965(37)2104
[資本金] 4億9千万円
[設立] 1998(平成10)年11月
[事業内容] 船外機製造
[年商] 227億円(2006年12月期)
[代表者] 吉村 強 社長
[従業員] 410人(社外外注を含むと725人)
[URL] http://www.y-k-p.co.jp

[採用情報]
●募集要項:●総合職 高専卒、大卒 3〜4人  ●技能職 高卒 5〜6人   中途採用 約10〜20人
※この記事内容は、くまもと経済EX:2007年7月1日発行分の掲載内容です。