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くま経プレス 2009年1月 vol.228
国民の感覚を司法に生かす」 裁判員制度09年5月スタート 
熊本地方裁判所 所長
古賀 寛
国民の司法参加の一環として2009年5月21日から正式にスタートする裁判員制度は、私たちの中から選ばれた裁判員が実際に裁判に参加するというもの。先日、候補者名簿記載通知が一斉に発送され、いよいよ現実味を帯びてきている。そこで、熊本地方裁判所の古賀所長にインタビューした。 

こが ひろし/1949(昭和24)年5月2日生まれの59歳。北九州市出身。東京大学を卒業。74(昭和49)年判事補任官。以後、84(同59)年大阪地裁判事、95(平成7)年福岡高裁判事、2005(同17)年大分地家裁所長などを経て、07(同19)年10月1日から現職。 
―裁判員制度について。
古賀 刑事裁判の第一審を対象に、国民の皆さんから選ばれた裁判員が裁判官と一緒に審理、評議、判決まで行う制度です。制度開始の2009年5月21日以降に起訴された事件から採用されますので、裁判員が参加する裁判は7〜8月頃になるだろうと言われています。
―米国の陪審制度との違いは。
古賀 陪審制度は陪審員が有罪か無罪かを決定し、有罪であれば量刑を裁判官が決定するという制度です。裁判員制度は裁判官と裁判員が一緒に証拠に基づく意見交換、有罪か無罪かの決定、量刑の判断までを行います。各国の司法制度の良い点を集めた、わが国独自の制度と言えます。 
―裁判員に選ばれる場合、どういう流れになりますか。
古賀 まず、裁判員の候補者を選挙人名簿から無作為に抽出し、選ばれた方に「裁判員候補者名簿記載通知」をお送りします。次に、事件ごとに裁判員候補者名簿から候補者を抽選し、「○○事件の候補者に選ばれましたので、△月×日に裁判所に来てください」という通知(呼出状)を裁判の6週間前頃に送付します。当日午前中に集まった方の中から裁判員6人を決定、昼から審理が始まり、夕方5時を目安に行います。裁判は7割程度が3日ほどで終了するだろうと想定しています。
―候補者になったことは秘密にしないといけないのですか。
古賀 裁判員候補者になったことを家族や仕事の上司等に伝えるのは問題ありません。しかし、例えばブログなど不特定多数に個人が特定できるような形で情報をオープンにすることは禁じられているのでご注意ください。
―裁判員になることに不安を感じている方も多いといわれますが。
古賀 「法律の知識がないのに務まるのだろうか」と思われる人もいますが、この制度自体が国民の感覚を裁判に取り入れようという趣旨ですので、みなさんが普段の生活から得た経験や考え方を基に議論していただければ大丈夫です。法律の専門知識は全く必要ありませんし、裁判を進める上で裁判官がみなさんをサポートしていきます。現在、専門用語などのわかりやすい言葉への言い換えなども進んでいるところです。  遠方から来られる方の交通費や宿泊費は必要に応じて支払われ、裁判員の場合日当も1日あたり1万円以内でお支払いします。また、裁判員の方のお子さんの一時保育も熊本市の協力を得て周辺の保育園を紹介してもらうなど、整備が進んでいますので、そういった心配も解消できるよう環境を整えています。 
―読者に向けてメッセージがあれば。
古賀 批判的に見られることもありますが、将来を良くするために提言された制度です。多くの方が法とは無縁と思っていますが、実は法との関わりは深いものです。法に触れ、知ってもらうための制度でもあります。素晴らしい制度にしていくためにぜひご協力をお願いします。
―ありがとうございました。
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