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くま経プレス 2009年7月 vol.234
リユース瓶の普及推進でリサイクル功労賞受賞
瓶の洗浄ラインを説明する田中専務
エコボ水俣・鞄c中商店専務
田中利和さん
 空き瓶の回収・洗浄・販売を手掛ける鞄c中商店(熊本市良町5丁目)の田中利和専務は、リユース瓶の普及推進で環境省の外郭団体(社)環境生活文化機構から2009年度のリサイクル功労賞を受賞した。
 同賞はリサイクル事業を推進する企業や個人を顕彰するもので、県内から初受賞。リユース事業の拠点となる同社水俣営業所(水俣市浜松町、水俣エコタウン内)に田中専務を訪ね、リユース瓶の仕組みなどを聞いた。


たなか かずとし/熊本市春竹町出身、1953(昭和28)年10月29日生まれ、55歳。東海大二高校卒。 01(平成13)年水俣エコタウンに営業所開設し、空き瓶のリユース・リサイクル事業を開始。現在、水俣エコタウン協議会会長を務める。また、全国牛乳パックの再利用を考える連絡会熊本ネットワーク事務局長、同九州ネットワーク代表などを歴任、その功績から04(平成16)年くまもと環境賞受賞。環境カウンセラー
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鞄c中商店は1946(昭和21)年創業、年商は約6億円。従業員は26人。工場は敷地面積7000u。びん洗浄ライン、粉砕機などがあり、年間400万本を洗浄し、再利用している。リユース瓶以外の茶色の瓶や白の瓶は再生びん工場に出荷、ワインやウイスキー瓶は土木用骨材、一部はガラス工芸品として再生利用している。また、年間数千人の見学者が訪れ、修学旅行・環境学習や総合学習の現場として、広く活用されている。
リユース瓶の普及推進でリサイクル功労賞受賞
―リサイクル功労賞、おめでとうございます。


田中 ありがとうございます。当社は、01(平成13)年2月に地域承認された「水俣エコタウン」の中核事業として、使い捨て瓶を回収・洗浄し、再使用する事業を行っています。「環境モデル都市づくり」を目指す水俣市では、リユースによってごみを増やすことなく、地域経済を活性化し、雇用が創出される地域づくりを進めていますが、その一つに、リユース瓶があるわけです。
 水俣エコタウン内にある工場では、できる限り使い捨て瓶をリユースさせ、どうしてもリユースできないものはリサイクルに回すシステムを構築してきました。このリユースの取り組みを南九州から全国に広めようと、03年から環境省の「循環型社会形成実証事業」として、南九州で流通する焼酎瓶を使い捨てから繰り返し使えるものに変えいこうという統一リユースシステムのモデル事業をスタートしたわけです。今回、こうしたリユース瓶の取り組みが評価されたことは大変うれしく思っています。


―統一リユース瓶の仕組みについて教えてください。


田中 リユース瓶事業は900ml茶びんに特化していますが、これは南九州(熊本・鹿児島・宮崎)の酒造メーカー約240社のうち、約6割が900ml(使い捨て)茶びんを使っているためです。統一リユース瓶は、回収して洗浄し、繰り返し使用できる容器で、瓶の肩口に「R」の文字が刻まれています。このリユース瓶を酒造メーカーに販売し、出荷します。空き瓶となったものは、酒類販売店などが消費者から1本5円で買い取り、さらに酒類販売店は瓶代を上乗せして私たちびん商に販売します。こうしたリユース瓶の出荷から回収、再使用までの流通システムを構築し、リサイクルよりも環境負荷の少ないリユース瓶の普及を進めています。


―リユース瓶にはどのようなメリットがありますか。


田中 まず酒造メーカーにとっては、出荷した商品を回収し、再利用するという環境にやさしい企業としての社会的責任、そして新びんの購入費に比べ安価でコスト削減ができること。 加えて、新びんは段ボール箱で入荷しますので、洗浄・殺菌・充填・出荷などの工程で手間や廃棄物処理などの作業が発生していましたが、リユース瓶ではレンタルケースを使いますので、そうした作業費や廃棄費用が削減できます。流通段階では小売店や飲食店、消費者にリユース手数料が入り、廃棄物処理費用が削減できます。行政にとっては、一般家庭から出る廃棄物が削減され、収集・運搬・処理という環境費の削減による節税効果が期待できるなど、それぞれの過程で大きなメリットが生まれます。


―現在の900ml茶リユース瓶の出荷・回収状況は。


田中 現在、県内7社、鹿児島4社の酒造、醤油メーカー 11社23銘柄と取り引きが拡大し、年間約200万本を出荷しています。回収率は約40%です。


―リユース瓶の普及のためには回収率のアップが課題ですね。


田中 そうです。例えば南九州で使われるリユース瓶を100万本と仮定して、それがすべて回収・再使用されるとすると、1回目の再使用だけで、従来のワンウェイびん(使い捨て)に比べて一般廃棄物を500トンも削減できる効果があるといわれています。このリユースシステムが円滑に稼動するためには、何よりも一般消費者や酒類販売店などの協力が不可欠であり、市民一人一人の支えが必要です。お陰様で「Rびんを広めよう会」という市民の会や、超党派の県議会議員や副知事、県幹部職員などが「Rびんで飲もう会」を立ち上げていただき、事業の底上げを図っています。ぜひ、みなさんのご理解とご協力をお願いします。


―最後に今後の抱負を。


田中 日本は戦後の高度成長の流れの中で、モノを捨てることを容認し、モノを大切にしなくなってきました。その延長線上には、リストラやいじめなど、人も大切にしない風潮を生み出しました。私は今こそ、モノを大切にし、使い捨てを見直す環境教育の必要性を感じています。その切り口の一つとして、私どもはガラス瓶を取り上げてきたわけです。
 また、私はリユース事業は、「静脈産業」だと考えています。酒造メーカーが心臓部だとすれば、中身が空になった瓶を新品にして心臓に戻すことで、消費の過程で生じる環境への負荷を減らし、雇用や環境教育の場も生み出すことができるからです。リユース瓶を通して、持続可能な循環型社会の実現を目指し、水俣から世界へ、このリユース瓶のシステムを広げていきたいですね。


―ありがとうございました。

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