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くま経プレス 2011年5月 vol.256
良い作品を作り続けて、熊本に恩返しを
液状のろうを浸した筆で防染部分を描く高津さん。熊本市白山の工房で撮影
染色工芸家
高津明美さん
 阿蘇の雄大な自然をテーマにろうけつ染めの技法で作品を制作している染色工芸家の高津明美さん。20歳から作品を作り続けて今年で43年になる。日展に26回の入選、特選を2回受賞し、昨年1年間は日展審査員を務めた。「60歳を過ぎてもチャレンジし続ける」と語る高津さんに、熊本市白山の染工房で作品に対する思いやこれからの目標についてインタビューした。

プロフィール/たかつ あけみ 熊本市健軍町出身。1947(昭和22)年10月22日生まれの63歳。第二高校普通科―兵庫女子短期大学美術デザイン科(現・兵庫大学短期大学部美術デザイン学科)卒業。在学中にろうけつ染めを学ぶ。卒業後、熊本県染色工業協同組合に入社し、染色講師として勤務。育児をしながら29歳で日展初入選以降27回入選。昨年5月からは1年間審査員を務め、現在は日展会員。崇城大学芸術学部・必由館高校非常勤講師。
―ろうけつ染めについて、教えてください。


高津 液状に溶かしたろうで模様を布地に描き、染色後にろうを取り除く技法です。私の父は美術の教師をしていたのですが、幼いときから阿蘇にスケッチをしによく出かけていました。阿蘇が大好きな場所だったので、自然に阿蘇を題材にするようになりました。雨上がりは、タワシでゴシゴシこすったみたいに山肌の色まできれいに見えたり、台風のときは山上の雲の動きが荒れ狂っていたりと、季節や天気、時間帯によって変化する阿蘇の大自然には魅力がたくさん詰まっています。
―天草更紗の復興にも注力されていますね。


高津 はい、以前から興味を持っていましたが、数年前に天草更紗の職人さんと40年ぶりに再会し、技法を学びました。今も京都まで通って型友禅を学んでいます。天草更紗の帯や着物、ふろしきなどを制作し、展覧会や工房で販売しています。周囲からは「60歳を過ぎても学ぶ姿勢がすごい」と驚かれましたが、年齢なんて関係ありません。私は、途絶えそうになっていた天草更紗の伝統文化を残したいのです。きちんとした技術で、作品として形に残すことで、表現し続けることが大切だと思います。
―昨年11月に香梅アートアワードを受賞された感想は?


高津 感謝の気持ちと同時に、美術教育に対する責任感が増しました。お菓子を買いに来た親子が店舗併設のアートスペースで、作品を鑑賞している様子を多く見かけました。私は美術館の協議会委員もしているのですが、小さな子どもたちが美術館に来る機会が少ないことを心配しています。幼少期から気軽にアートに触れることで感性を養うことが大切だと思います。
―高津さんの作品で鮮やかな色合い、ダイナミックな作品が印象的でした。


高津 色鮮やかな「赤」の作品は特に人気があります。阿蘇山は火の山のイメージが強く、赤が似合うからでしょうか。また、スケッチするときは、簡単な線で描きながらも、実物以上に本物らしく見えるようにデフォルメしています。必要のない部分は省き、大事な部分を残すことで、実物よりも強い印象になるからです。
 以前、私の作品を購入した経営者から「重要な判断を迫られ、孤独を感じたときに、作品を見ると元気が出てくる」と言われたことがあります。私の作品を見て、1人でも多くの方が元気になったり、きれいだと思ってくれたらうれしいです。これまで、私は熊本の方に応援していただききました。これからは熊本に恩返しをしたいと思っています。そのためにも、信念を持って良い作品を作り続け、若い人たちを育成して世界に羽ばたく染色のプロを育てていきたいと思っています。


―ありがとうございました。
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