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 セカンドライフ特集
 →それぞれの第二の人生をいかに楽しむか  →“音楽”との再会を機に、会社社長から飲食の世界へ  →テーマは“考古学”。土器、発掘・・・団塊の世代だからできること
 →熊本と宮崎を往復、音を楽しみ郷土料理やお酒も楽しむ  →着たい洋服がイメージから形になっていくのが楽しい
 →手作りのギャラリーは多くの仲間が集まる“交流の場”に  →焼きあがるプロセスが手作りパンの醍醐味
くま経プレス 2007年3月 vol.206


あなたが退職した後の第二の人生について考えたことはありますか?
仕事に忙殺されてなかなかできずにいたことにチャレンジできるチャンス、それがセカンドライフです。
 第3回となる本特集ではイキイキとしたセカンドライフを実践している6人をスタッフが訪ね、話を聞いてきました。
「レストランバーCIB」経営 内野昌時さん(55歳)
「レストランバーCIB」経営 内野昌時さん(55
 熊本市花畑町にあるレストランバー「CIB(キーブ)」を訪ねた。オーナーの内野さんは元会社社長という経歴を持つ。
 学生時代はバンドをしていたが、社会人になってからは32歳で建築設備保守・管理の会社を設立し、仕事漬けの毎日を送っていた。そんな内野さんに転機となる出会いが訪れたのは40代半ばの頃。「偶然昔の音楽仲間とばったり再会。彼はまだ音楽を続けていてアマチュアジャズボーカルの発表会に誘われ、久しぶりに音楽に触れました」それからはギターを再開し、バンドを結成する中で音楽仲間も増え、「音楽ができる店をしたい」と思うようになる。そして、「30歳から50歳までの20年を、50歳からの20年でもう一度挑戦したい」と転身を決意した。

「辛かったからこそ面白い」

 50歳で会社を退き、飲食業をするために料理学校に通った。また、社長の垢を落としたいと思い、知人には頼らず求人誌を見て応募して飲食店で半年間修行した。ちょうどそのころ、行きつけのバーの経営を引き継いだ。開店後も「たくさんのミュージシャンとの関わりを深めたり、海外を含めて色々なライブハウスを見て回りました」と新店のイメージを固めていった。05年11月には“広々とした空間とおいしい料理と素敵な音楽”をコンセプトとした2店目をオープン。店内ではバーカウンターや飲食スペースの他、生演奏を楽しむことができる。午後9時以降は県内外のアーティストによる生演奏が行われ、音楽のジャンルにより店内の雰囲気も一変するという。「経済的にも肉体的にも精神的にも辛かったですが、大変だったからこそ面白いのだと思います。だから一生懸命になれたんです」と振り返る。「今後は熊本の若いミュージシャンを育てたいですね」と笑顔を見せる。春先には自分のバンドを結成して本格的な活動を始める予定。
考古学 横田浩さん(59歳)
考古学 横田浩さん(59歳)
 横田さんが考古学に興味を持ったのは中学生のころ。銀行に就職したのちも勉強を続けた。退職したあとに選んだ人生は、やはり“考古学”。現在は、水中に潜っての遺跡の発掘や縄文土器を作るなど、考古学の世界にどっぷり浸かっている。
 横田さんの工房にはこれまで作ったさまざまな模様の縄文土器が並んでいる。「縄や竹、木の棒を使って模様をつけます。資料を見ながら、おもしろい模様があったら、自分で作ってみるんです」。高校時代から縄文土器を作り続けており、年に1度、熊本市内で個展を開くほどの腕前だ。また、20歳の時に当時としてはまだ珍しかったダイビングを始めた。きっかけはやはり考古学。「洞穴調査をしていると、水中に潜らなければいけないことも出てきます。そのために始めたんです」という。現在は、NPO法人アジア水中考古学研究所の会員として、海中に沈む焼き物などの調査にも参加している。

「大王のひつぎ実験航海」にダイバー要員として参加

 05年7月には熊本から大阪までを古代の船を使って渡る「大王のひつぎ実験航海」に備品や調度品管理、ダイバー要員として参加。「重い調度品を古代の船を使って運ぶのは至難の業。漕いだ人は大変だったと思います。ハプニングもいろいろありましたが、大阪に着いたときは、感動で目が潤んでしまいました」。当時注目を集めた試みだったが「大阪まで古代船で荷物を運ぼうなんていう面白いことを思い浮かぶのは、団塊の人間ぐらいしかいませんよ。それだけパワーがあるということなんでしょうか」と笑う横田さん。「土器、考古学のほかにも、薫製作りや野菜づくり、釣りなどやりたいことはたくさんあります。気付いてみれば結構忙しいですね」。
二胡 小牧斎さん (57歳)
二胡 小牧斎さん (57歳)
 「ある程度うまくなったら家族にも聞かせようと思っています。それまでは一人で我慢ですね」と話す小牧さんは大谷楽器で二胡に挑戦中。
 「5〜6年前に博多に出張した時にパーティで女性が二胡を演奏しているのを聴いて感性に響き、いつかやってみたい、と思いました」と二胡との出会いを語る小牧さん。宮崎県在住の小牧さんは3年前に地元同好会があることを知り、入会。通信教育の教材用の楽器を使っていた小牧さんは次第に「いい楽器を持って、きちんとした指導者に教わりたい」と思うようになり、1年前インターネットで調べた大谷楽器に来店。昨年7月レッスン生になった。「音を楽しむのが音楽。自分の好きな曲をマスターするのが楽しいですね」と感想を語る。宮崎県との往復については「上達できる達成感の方が大きいので移動は苦になりません。お酒や郷土料理も熊本に来る楽しみの一つです(笑い)。遠方から来ている分、本を読むなど時間を有効活用するようにしています」と逆に楽しんでいる様子。目標を聞くと「きれいな正確な音を出すのは難しいですが、プロの演奏に少しでも近づければ」と語ってくれた。
洋裁・手作り 宮下由美子さん(51歳)
洋裁・手作り 宮下由美子さん(51歳)
 「お気に入りの生地を使って素敵なワンピースができました。少しずつ作品を増やしていきたいですね」と手作りした洋服を手に宮下さんは笑顔で語る。
 「元々はセーターをベストに作り変えたり、ワンピースをジャンパースカートにリフォームしたりはしていました。素敵な洋服を作ってみたいという思いはありましたが、最初から全部作るのは無理だと思っていました」という宮下さんが手づくりに挑戦するきっかけになったのはシルクプラウドが行っているソーイングサポート教室の告知だった。「これだと思い、早速申し込みました。最初に生地を選び、先生と相談しながら形を決めました。制作は裁断までしてある状態でスタートしたので、これならできると思いました」作ってみた感想を聞くと「最初、生地を見てイメージしたものがだんだん完成していくのが楽しかったですね。また、カーブのつけ方などもプロから教わりながらできたのはありがたかったですね。出来上がった時はすごくうれしくなり、また違う服を作りたいと思いました」と次の手作りにも意欲を見せる。今はあらかじめ残しておいた生地でスカート作りに挑戦中。
「ギャラリーロンド」オーナー  伊藤幹雄さん(60歳)
ギャラリーロンド」オーナー 伊藤幹雄さん(60歳)
 山都町の清和天文台に向かう途中、銀色に光るひときわ目立つアーティスティックな建物が視界に飛び込んできた。この建物「ギャラリーロンド」はなんと、オーナーの伊藤さんの手作りなのだという。
 子供の頃から絵を書くのが好きで、「自分のアトリエを作りたい」と考えていた伊藤さん。「お金を貯めて人にはできない遊びをしようと思っていました」と言うとおり、55歳で退職後、退職金をはたいて材料を購入。1年半かけてギャラリーを完成させた。「数年前に知り合った建築士の友人がデザインをしてくれました。退職金は材料費でなくなってしまったので2人がかりで手づくりしましたが、大変でしたよ」と振り返る。噂を聞きつけた建築家が見学に来ることもしばしばあるという。

ミュージシャンの来店が転機に

 当初はカフェの営業と退職後に始めた油絵を展示していたが、たまたまミュージシャンが来店したのをきっかけにコンサートをするようになり、自身も去年の5月からギターを始めた。「週に1回音楽仲間が集まって、音楽教室のようなことをしています。若くは中学2年生から63歳まで遊びにきます。音楽という共通の話題があるので年代関係なく楽しめますよ」と話す。「じゃあちょっと歌ってみようか」と言って「あの素晴らしい愛をもう一度」を弾き語りで歌ってくれた。
 「ギャラリーを作っていた時は毎日作業でしたが、大工仕事も楽しかったですよ。人生は一度きり。やりたいと思ったときにやらないと」と言う伊藤さんにこれからの目標を聞くと「やりたいことはいっぱいあるけど、秘密です」とにこやかに笑った。
パン作り 田山五雄さん(59歳)
パン作り 田山五雄さん(59歳)
 「男子厨房に入るべからず」とはもはや昔の言葉。田山さんがセカンドライフでチャレンジしているのはパン作り。熊本県社会保険センターで開かれているパン教室に通ってもうすぐ1年になる。
 「40年近くサラリーマンをしていて、今までの生活のリズムに近い動きをしたいと思いました。せっかくするなら生活にプラスになるものを、と思っていた時に友人から誘われて通い始めました」というのがきっかけ。教室では田山さんを誘った友人を含めて男性は2人。「最初こそ周りが女性ばかりだったので腰が引けてましたが、今ではすっかり慣れました。みなさん親切で、わからないところがあれば手取り足取りで丁寧に教えてくれますよ」と笑顔で話す。教室でこれまでに22種類のパンを作った感想を聞くと、「できあがるプロセスが楽しいです。自分の手で作ったものは買ってきたものと違い、格別」との事。家庭でもお孫さんたちに作ったものを食べてもらって好評だったそうです。「将来的には石釜を作ってピザを焼くのが夢」と語ってくれた。また、インターネットでレシピを調べて「こんなパンを作ってみたい、という構想を固めています」と夢は膨らむ。田山さんが家族みんなでパン作りを楽しむ日もそう遠くなさそうだ。
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