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くま経プレス 2007年12月 vol.215
トレーニングの3つの要素は「うれしい・たのしい・おいしい」
同劇場ステージでパンくんと
阿蘇カドリー・ドミニオン  みやざわ劇場 アニマルトレーナー 
宮沢 厚さん
 テレビ番組でお馴染みのアニマルトレーナーの宮沢厚さん。現在、阿蘇市黒川の阿蘇カドリー・ドミニオンを拠点に、天才チンパンジーのパンくん、ブルドッグのジェームズ、そしてたくさんの動物たちとトレーナーが繰り広げる「みやざわ劇場」を展開している。同劇場に宮沢さんを訪ね、パンくんのことや舞台にかける思いを聞いた。

みやざわ あつし 1959年、宮崎県生まれ。 東京農業大学畜産科卒。日本を代表するアニマルトレーナー。93年から宮崎県・フェニックス自然動物園でオランウータンのサクラを担当し、数々のショーが話題となる。98年から栃木県の動物園に勤務し、チンパンジーのももちゃんと舞台やテレビ、コマーシャルなどに出演して幅広い人気者になる。04年、アッツ(アニマル・トレーナーズ・カンパニー)を設立。06年カドリー・ドミニオンの社員となる。「みやざわ劇場」で動物たちのショーを行う傍ら、人気テレビ番組にも出演中。著書に「ももといっしょ」(河出書房新社)、「ももが教えてくれたこと」(主婦の友社)などがある。
−ショーを拝見しました。パンくんは本当に宮沢さんの言葉が分かっているみたいですね。



宮沢 パンくんは単語で300以上理解しています。ですから言葉で言うとパンくんはそのまま分かるんです。人間とチンパンジーは、染色体も98%同じですし、特にパンくんは頭の良い子ですから。



−パンくんはどんな性格の男の子ですか。



宮沢 とにかく社交的です。明るく、好奇心旺盛、だけど少し気が小さくて・・・。人間で言うと小学校の5、6年生くらいです。



−パンくんをはじめ、動物たちは普段どのようなトレーニングを行っているのですか。



宮沢 専門学的には「オペラント条件付け」と言いまして、目的があってトレーニングをするのではありません。ショーで見ていただきましたが、パンくんは曲芸は一切しません。どういうことをやるかというと、お芝居や漫才などです。「一輪車に乗せよう」という目的でトレーニングはしないんです。普段の生活の中で、パンくんが興味を持って、自然に現出した動作を、その瞬間に褒めて固めるんです。例えば、でんぐり返しをしたり、足で木にぶら下がったりしたら、「そうだよ!それだよ!」って、その瞬間に言葉を発して、褒めて、その動作を固めていく。そうすると私が言葉を言うと、その動作をするようになるんです。パンくんにはそうやって自然に身についた動作のストックが、300くらいあります。だからパンくんにとって無理がないんです。



−本当に自然に出た動作なんですね。



宮沢 そうです。私はパンくんにストレスになるトレーニングはやるべきではないと考えています。パンくんにとってもトレーニングが楽しい、舞台も楽しい、そういうふうにしないと駄目なんです。



−ショーの中で、宮沢さんとパンくんは先生と生徒みたいな関係だとおっしゃってましたが、実際はどうなんですか。



宮沢 それが難しいんですが、トレーニングテクニックのひとつとして、2人の関係をその都度変えてやるんです。例えば、パンくんが不安になると私の所へ逃げてきます。そして私が守ってあげる。これは父親と子どもの関係です。寂しいときはいつも一緒にいてやる。これは母親と子どもの関係。遊ぶときは一緒になって遊ぶ、これは友達です。また勉強するときは褒めてやる。これは学校の先生と生徒みたいな関係ですね。そういうふうに、親であり友達であり先生である。それを場面、場面で変えていくんです。



−そうすると信頼関係が深まるんですね。



宮沢 そうなんです。それが一番大切です。動物は言葉を話せないわけですから、動物と人間が種を超えたところで、いかに心が結びつくかという、信頼関係が大切なんです。それが出来ると、お互いがお互いを思いやる関係になるんです。これが一番難しいことなんですけど、それが出来ると、「次は何をしようか?どうしてほしいの?」って聞いて来てくれるんです。それに対して僕たちは、嫌な事は絶対させない。昨日楽しかった事が今日も楽しいとは限らないですから、何が楽しいのかということを常に聞いてあげるんです。出来るだけ楽しい方、楽しい方へね。私のトレーニングの3つの要素は、「うれしい・たのしい・おいしい」です。それ以外はさせません。




−最後に宮沢さんの舞台にかける思いを聞かせてください。



宮沢 お陰さまで、全国各地から「みやざわ劇場」を見にきていただけるようになりました。そうしたお客様に、私たちが出来る恩返しというのは、「本当に良かった」と言っていただけるショーをお見せすることしかないんです。そういう意味で、みやざわ劇場は日本一厳しい劇団です。舞台を務める責任と緊張感がなければ絶対にいいものは出来ません。今ではスタッフも私の考え方を理解し、私が思うレベルの一歩先を作ってきてくれるようになりました。これからも、熊本から全国に向けて、楽しい舞台をお届けしたいですね。



−ありがとうございました。





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