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くま経プレス 2008年8月 vol.223
細川コレクション永青文庫を、熊本の歴史文化の拠点に
(財)永青文庫 常務理事
吉丸 良治さん
今春、熊本市二の丸の熊本県立美術館本館に「細川コレクション 永青文庫展示室」が開館した。国宝8件、重要文化財31件を含む永青文庫の所蔵品の総数は数万点にもおよび、熊本の貴重な文化拠点として期待されている。そこで、開館記念展の第2部「大名細川家の暮らしの美」が開催されている永青文庫展示室を訪ね、(財)永青文庫の吉丸良治常務理事に、その価値や熊本常設展示の意義について聞いた。

よしまる・りょうじ/荒尾市野原出身、1938(昭和13)年12月22日生まれの69歳。中央大学法学部卒。36年間の県庁勤務を経て98(平成10)年4月から熊本県伝統工芸館長を務め、その後九州産交グループの常勤監査役、副社長などを歴任。06(18)年3月から九州産業交通ホールディングス顧問。同年5月、永青文庫の常務理事に就く。趣味は歴史探訪。
―永青文庫展示室開館の経緯と目的を聞かせて下さい。
吉丸 細川家は熊本を240年間治め、熊本とのゆかりが一番深い大名です。永青文庫の常設展示を、細川コレクションに一番ゆかりが深い熊本に誘致しようと、細川護熙(財)永青文庫理事長、潮谷義子前知事をはじめ、多くの方の支援と協力のおかげで、常設展示が現実のものとなりました。
常設展示室が開館したことは、熊本の文化を再確認し、県民みなさんの熊本の歴史に対する理解が深まるという意味においても大変有意義なことです。県外からの観光客に対しても大きな魅力に繋がります。
―永青文庫の歴史的価値について教えて下さい。
吉丸 細川家の歴史は南北朝時代から始まり、約700年もの間続きます。歴史の紆余曲折を物語る美術工芸に結びつく永青文庫の資料は、日本全国でもまれにみる多さです。永青文庫の膨大な資料は、細川家始祖の頼有(よりあり)公が記録を大事にする方で、その後も代々記録を大切にする姿勢が貫かれたことによるものです。応仁の乱(1467〜1477年)では京都が焼け野原になりましたが、細川家は資料を山奥に隠し、貴重な資料を守ってきたと言われています。常設展示室で私達が目にすることができるのは、細川家の資料を守るという強い精神のたまものだと思います。そうでなければ、ほかの多くの大名同様に美術工芸や資料が戦火によって消失したり、国内外に散逸していたのではないでしょうか。
―熊本での常設展示が意味するものは何ですか。
吉丸 年に1回の展示は、専門家や愛好家など一部の方には注目されますが、常設展示は毎回視点をかえた展示があることで、県民にとっての身近さを意味します。熊本城本丸御殿も復元を終え、永青文庫の常設展示も始まり、加藤・細川の両文化を堪能できるということは、熊本の大きな魅力として発信していくことができます。また、単発的な展示と違い、年に4回ほどの入れ替えを行いながら展示しますので、違う観点で長期的な楽しみ方ができます。
―熊本県民にとって、貴重な文化施設となりますね。
吉丸 そうです。永青文庫が美術品だけでなく、古文書、記録などの歴史・文化の情報発信の拠点となれば、県内に残る史跡や細川文化にまつわる数々の文化遺産が、熊本にしか残されていない貴重な文化として、さらに身近に感じていただけるはずです。歴史を遠い過去のことではなく、身近に感じた時、人間は自然に自分の故郷に対する誇りが出てくると思います。県民のみなさんが「これが熊本です」と胸を張って言える誇りとなるような熊本の歴史文化の拠点に、永青文庫がなれれば嬉しいですね。
―ありがとうございました
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