トップ Companies くまもと経済EX 2007 “カンバン”導入で現場力向上 技術・開発融合した独自のモノ作りを確立
くまもと経済EX 2007

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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“カンバン”導入で現場力向上 技術・開発融合した独自のモノ作りを確立
つちやゴム(株)
「元気なモノ作り中小企業300社」に選定
 今年6月、経済産業省中小企業庁の「元気なモノ作り中小企業300社」に選定されたつちやゴム(株)(上益城郡嘉島町、倉田雄平社長)。倉田社長は「これまで取り組んできた自社開発製品への取り組みが浸透してきた結果。熊本から全国へ、さらなる普及を図りたい」と意欲を話す。1949(昭和24)年の創業以来、月星化成の下請け業務を中心に展開してきたが、現在は同社との取引はゼロ。90年から始めた自動車用ゴムホースの生産、また、弾性舗装材「エコロック」などの自社開発製品などで業容を拡大している。
屋上施工の「エコロック」首都圏へ販路拡大
初の自社開発製品となる環境資材のエコロック
 「エコロック」の開発は95(平成7)年。同社が初めて取り組んだ自社開発製品だ。古タイヤの再生チップをリサイクルした商品で、クッション性と透水性を備えた、環境負荷が少なく安全な舗装材として活用されている。
 ゴム材を使用しているため衝撃吸収率はアスファルトの3%に対し、26%。ひざへの負担が少なく、すべりにくいというのが特長で、これまでも、教育施設や福祉施設など子どもや高齢者が使用するスペースへの導入が進んできた。
 同社では、屋上緑化に対応したエコロックも商品化。近年ではビル屋上のプレイルームや遊具周りなどでも設置が進んでいる。また、ゴムの断熱性にも注目。屋上に設置することで、冷暖房の効率性が向上するなどの2次的効果も発揮できるという。昨年末には東京に、スタッフ常駐の東京営業所を開設。より環境に配慮した製品として首都圏での販路拡大を目指している。
自動車関連強化ねらいカンバン方式導入
 現在、マツダ自動車向けにゴムホースを中心に月間130万本を生産。県工業連合会の輸送機器グループ、自動車産業界の系列横断組織「リングフロム九州」への活動にも参画するなど、自動車関連部品の更なる取引拡大にも意欲的に取り組んでいる。
 昨年からは、アイシン九州(株)の協力を受け、製造ラインに「トヨタ看板方式」の導入を進めている。「ムリ、ムラ、ムダをなくし、生産効率を向上させるというカンバン方式の合理性を実感できている。原価を下げて品質を上げる、生産性を上げてさらにスピードを加速するなど“カイゼン”の繰り返しから生み出される効果をしっかりと会社のものにしたい」と倉田社長。約1年間の取り組みで、製造現場の意識も徐々に変わってきているという。「自動車業界の仕事は非常にシビア。その分、そこで蓄積されるノウハウは会社にとっても貴重な財産になっている」と話す。同社では、自動車関連部品だけでなく他製品の製造ラインにもカンバン方式を水平展開。会社全体のモノ作りのレベルアップにつなげていく方針だ。
メタボリック対策予防治療機器を商品化へ
メタボリック対策予防治療機器として商品化を進めるバイオメトロノーム
 熊本大学との共同開発を行っている(微弱電流と温熱を同時に印加することで)熱ショック蛋白質の発現を促進する装置「バイオメトロノーム」も商品化への動きが着々と進んでいる。
 同社では、電磁波を遮断し通電性が高いという特性を持った自社製品「電磁波シールドゴム」の技術をベースに、通電すると発熱して遠赤外線を放出するという機能を持たせたゴムパットを新たに開発。「バイオメトロノーム」はこのゴムパットを用い、一定の周波数のパルス電流と一定の温度の蒸気熱を送り込むシステムで、生体に装着すると内臓脂肪量が非装着時に比べ30%〜70%程度減少する効果が得られるというもの。すでにマウスでの実証実験を終えており、熊大医学薬学研究部の甲斐広文教授、荒木栄一教授らが日本薬理学会、日本糖尿病学会などで発表済み。現在は、商品化へ向けフェーズ2と呼ばれる臨床実験を行う段階に進んでいる。
 健康保険法の改正により、08年度から40歳以上でメタボリック・シンドロームの危険性が高い健保加入者への健康指導が義務化されることを受け「メタボリック対策予防治療機器としての販売を考えている」(倉田社長)という同社。今年秋から、県外の産業医と提携し、実際の指導時に「バイオメトロノーム」を使用してもらい、効果を臨床の場で確認してビジネス化につなげる計画が進んでいるという。倉田社長は「マーケットが形としてしっかり見えてきつつある。販社の設立などの準備も始めたい」と話している。
技術と開発融合した“モノ作り”企業へ
上益城郡嘉島町の熊本南工業団地内にある本社事務所
 現在、同社の売上構成は自動車関連部品が6割強、自社開発商品が4割弱という状態。倉田社長は「自動車関連の取引も伸ばしながら、これまで開発してきた自社製品、また、新たな研究開発による新製品の開発などで、自社商品の割合を早い段階で5割にまで引き上げることが当面の目標」と話す。「世界でもトップを走る日本の自動車業界の厳しい要求水準に応える生産技術を身につけ、会社の足腰を強くしながら、アイデアを形にする研究開発のノウハウを融合させ、当社独自の“モノ作り”を確立したい」と意欲を語った。
企業DATA
[所在地] 〒861-3103 上益城郡嘉島町井寺431-21
[TEL] 096-237-0138
[FAX] 096-237-0129
[資本金] 3,000万円
[設立] 1949(昭和24)年8月
[事業内容] 工業用ゴム製品製造、運動靴製造、土木用資材製造販売、電磁波シールド製造
[年商] 20億円(07年3月期)
[代表者] 倉田雄平 社長
[従業員] 90人

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2007年7月1日発行分の掲載内容です。