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くまもと経済EX 2007

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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農業を中心とした街づくり「コッコパーク構想」
農業生産法人 (有)コッコファーム
“自然のままの教材”提供し地域教育に還元
循環型テーマパークは、自然の教材として学習現場でも生かされている
 6月20日、コッコファームの広大な敷地内にある「ひよことのふれあい広場」では、興味深げにひよこの成長や生態についての説明に聞き入る約150人の地元中学生の姿があった。学校での総合学習の一環で、同社の協力のもと自然や農業に触れて学ぶ校外学習の一幕だ。コッコファームでは、38年の歴史の中で培った農業の知識や築き上げた自然循環型テーマパークを“自然のままの教材”として教育現場に提供し、その恵を還元している。実地見学前に、要請があれば事前に学校を訪問し、基礎知識の話など導入部分の手助けも行う。中学校から送られてくる生徒からの感想文には、自然を肌で感じた喜びや、新たな発見など、多くの感動が寄せられている。
たまご屋さんのバナナ園
年中バナナの成長が観察できるバナナ園は、コッコファームのシンボルの一つになっている。
 生徒たちの興味を引いた一つに、敷地内に2カ所設けられているバナナ園がある。園内では、たわわに実った無農薬栽培のバナナを年中見学することができるが、バナナは房ごとにオーナー制が設けられ、応募すれば自分だけのバナナの成長を楽しみ、収穫することができる。始まりは、バナナの発育に卵の殻や鶏ふんなどが効果的に作用するということもあり、循環型農業を掲げる同社の取り組みの一環として栽培を開始した。国内でもまとまったバナナ園を有する場所は珍しく、2005年の愛知万博から出展要請を受けるほどにまで成長。今では、名物の一つとなり、朝取りたまごの新鮮さとバナナの醸し出す温かく優しい雰囲気が来場者を包み込んでいる。
 また、夏休み期間を利用して同社所有の宿泊施設に泊まり農作物の収穫などを体験する「プチ田舎暮らし」企画や、「農業での自給自足セミナー」をテーマに参加者同士が語り合い各人が応えを導き出す「我発見塾」を予定するなど、“農”をテーマに体験や会話の中から様々なことを感じ、学べる工夫が施されている。
 周囲を田畑や山々に囲まれたのどかな菊池の一角にあるコッコファームだが、敷地内にある直売所「ふれあい館」には年間30万人を超える来場者がある。同館では卵や鶏肉加工品、近隣農園で取れた野菜など新鮮な食品が並ぶ。その中でも「朝取りたまご3kg」は、一番人気で平日でも午前10時の開店前には多くの買い物客が並び買い求める。7月からは、保冷箱での販売を始めるなど品質保持も怠らない。また、ふれあい館では買い物ごとにポイントがたまる会員カードを発行しており、会員や来場者向けに年間4回の情報誌「自然の中に生かされて」を発行し旬のコッコファームを伝える工夫を施し、顧客への心配りも忘れない。
経営努力、シルバー人材活用などで評価され各賞受賞
 来場者数の多さを裏付けるように、前年度の優秀な農業経営者らを表彰する県農業コンクールでグランプリを受賞するなど、第三者からも高い評価を得ている。さらに、昨年10月には厚生労働省や(独)高齢・障害者雇用支援機構などが主催する、高齢者雇用開発コンテストで優秀賞を受賞。今年の6月には内閣府が主催する「再チャレンジ支援功労者表彰」を受賞した。
 これらの高い支持を支えるのは「地域との共生」「雇用の場創出」などといった企業理念に基づく経営姿勢がある。38年前、東京で数々の職を経験し、改めて郷土の自然の素晴らしさを感じた松岡社長。「過疎こそ宝」の言葉通り、そこにある自然、高齢者のマンパワーなどを有効に活用し現在の体制を築き上げた。また、「出会いによって人生観は変わる」という考えから、兄弟3人で知恵を出し合うと共に、多くの人の出会いから経験や知識を吸収し柔軟な企業運営を心掛けてきた。そのような思いや事業を未来へ継承するために、若い力が積極的に活動できる組織作りに務める。「社長としてのバトンタッチは1年で10%ずつ、10年を一つの目安と考えている」の言葉通り、長男の松岡義清取締役を中心に率先した行動を見せる。各部門での問題点や要望などを拾い上げ、会議などを通じて解決策を議論する。また、35歳未満の社員で「ニューリーダーの会」を結成。他社との勉強会で会員の研鑚を深めるほか、清掃活動などを通じて地域とのつながりを密なものにしている。同社内にあるもう一つのグループで55歳以上の従業員が会員の「シルバーライフの会」との交流も意識し、農業、人生の先輩から様々なノウハウを学ぶ姿勢を大切にしている。
若き力と頭脳の融合で新たなアイデアを形に
コッコファームの「展望庵」での収録の様子
松岡 義博 社長
 新鮮な「朝取りたまご」を主力商品に菊池の大地で生産されるあらゆる産品を提供するコッコファーム。テレビCMでは、CMの締めに流れる小さな女の子のセリフ「コッコファーム」のフレーズが印象的で多くのファンに支持されている。
 今年度は、松岡社長自ら作詞した歌詞を熊本出身の女性デュオ「DOYO組」がこの歌に乗せて施設を紹介する新バージョンを放映。「コッコのたまごはとりたてで・・・ふしぎなふしぎなコッコファーム」のCMソングが早くも浸透し、園児や小学生らが口ずさむほど。下期からは歌に合わせてDOYO組とプチDOYO組が楽しく踊る新バージョンもお目見えし、子供から大人まで広く親しんでもらえるような取り組みを展開している。また、無料休憩所「展望庵」を会場に、地元の若手アマチュアアーティストを応援する団体「熊本イズム」とタイアップし、夏祭りを開催するなど次々と斬新で新鮮な企画を打ち出す同社。2010年に向けては、情報ネットワークの拠点、新事業創出などの役割を持つ提案型の情報発信基地「マルチメディアセンター」構想も掲げる。これらのアイデアの実現に向けては、経験豊富な頭脳と若い力が融合しあい、農業を軸とした地域活性の想いが強く込められている。松岡社長は「私達の取り組みに関心をお持ちの異業種の方々とも一緒に新たな事業を考えていきたい」と話す。


松岡 義博 社長
まつおか・よしひろ 1949年1月30日生まれ、58歳。熊本県菊池市出身、中学卒業後農業の専門学校に1年間修学、農業後継者としての道を歩み始めるが、その後離農し横浜へ上京。11種類の職を経験した後に69年、20歳で創業し現在に至る。
企業DATA
[所在地] 〒861−1302 菊池市下河原2818
[TEL] 0968-24-0007
[FAX] 0968-24-5056
[資本金] 1000万円
[設立] 1995年10月
[事業内容] 鶏卵、食品加工販売、農産物生産販売、養鶏、人材教育のための教育事業(実農学園)
[年商] 25億円
[代表者] 松岡 義博 社長
[従業員] 118人
[URL] http://www.cocco-farm.co.jp/

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※この記事内容は、くまもと経済EX:2007年7月1日発行分の掲載内容です。