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くまもと経済EX 2008

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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継承と変革をキーワードに 世界の大型船舶建造をリードする
ユニバーサル造船 有明事業所
造船への熱意「有明海」
VLOC(30万トン級鉱石運搬船)の建造が進む有明事業所2号ドック
 全地球規模で動いている海上輸送、歴史の波を越え、産業発展における重要な役割を果たしてきた。中でも近年、大型船舶による輸送はそのメリット、必要性が再認識され、造船業界はフル稼働で世界の海へ船を送り出している。その最大級にして最先端の技術に特化するのが熊本県長洲町に位置するユニバーサル造船蒲L明事業所である。
 同事業所では、ユニバーサル造船の持つ高い技術開発力、先見性、効率的な企業経営を基盤に、世界の造船業のリーディングカンパニーとして30万トン級VLCC(Very Large Crude Oil Carrier:超大型原油タンカー)および30万トン級VLOC(Very Large Ore Carrier:超大型鉱石運搬船)の2種類に特化した船舶建造に注力している。
 有明事業所は1973〜75年に各地にできた製造所としては最終型の造船所であり、全国でもまれな独立分散型の工場配置を特徴に大型船舶建造にとって高い生産ポテンシャルを備えている。
 その有明事業所を象徴する「有明魂」という言葉がある。1973年に日立造船蒲L明工場として創業を開始、2002年10月に日立造船鰍ニ日本鋼管鰍フそれぞれの船舶・海洋部門が統合して誕生した現在のユニバーサル造船。この歴史の流れの中で特にVLCCをメーンとした大型船舶を造り込むという意気込みと統合を経験した結束にみる粘り強さが「有明魂」の言葉の意味に込められている。こうした従業員一人ひとりの造船に向ける熱意が有明海から世界の海へ旅立つ船には積まれている。
国際競争力のレベルアップメカトロ技術を駆使して
微細な加工技術の積み重ねが巨大な造船を支えている
 国際的競争が激化する造船市場、韓国や中国といった大規模なマンパワーを使った造船への挑戦により競争激化は避けることができない。また、造船における設計・品質・安全性・耐久性に関した国際的基準のハードルはより高くなってくる。こうした急速な変化に適応するため同社では既に段階的レベルアップを図ってきた。
 同事業所では、作業効率化を高めるために屋外作業からシフトして屋内作業の比率を高める製作環境の整備や自社で開発した造船船用溶接ロボット36台を使用するなどメカトロ技術を投入し、自動化率の向上を進めることで他社との差別化を図っている。現状維持による衰退ではなく、変革を常に念頭に置き、作業効率の向上や新たな技術・開発分野における挑戦を続けている。
船づくりは人づくり
停泊し引渡しを待つ30万トン級VLCC
 一方で、造船は職人技が鍵となる。どうしてもロボットにはできない人間的感覚を要する製作工程はどのような最先端技術が開発されたとしても必要。同社は熟練工の持つ高度な造船技術を次世代に伝えることも役目と考えている。船を形成する鉄の性質を読めるようになるまでには長い経験が必要に、マニュアルのではなく、感覚を生かした的確な判断と技が熟練工かそうでないかを区分するという。熟練工の世界は奥深く6〜10年以上も技術を磨いていく必要がある。
 若い人材を育てるために、社内では技能等級制と技能指導員制の2つの制度を採用している。技能のレベル分けすることで行員のインセンティブを引き出し、1〜3年目までは技術指導員をつけ、マンツーマンで指導するといった制度整備により良い人材、即戦力を常に育てている。約2万2千時間を技術指導の時間として費やしており、社員の技術力向上への積極的姿勢がうかがえる。
 モノづくりに携わる自己への挑戦が人を育て、人から形成されるプロ集団が世界の造船をリードする、まさに船づくりは人づくりである。
挑戦は続く
船づくりは人づくり、己を磨くモノづくりの信念を感じる背中
 材料費の高騰や国際基準ハードルアップなど決して楽観視できない業界、ピンチをチャンスとし、同社の挑戦は続いている。船舶航行の省エネに配慮した特殊な船型構造の工夫・開発による約6%のスピードアップや、海洋環境に安全な塗料技術などまさに変革を行動に移している。
 有明事業所で働く熟練工から若手行員の心の底に宿る「有明魂」は造船の技術と共に継承され、また、国際間の競争に打ち勝っていくべく品質・コストに対するあらゆる変革は同社を世界トップクラス、オンリーワン企業へと導き続けるに違いない。

水谷 和時 所長
みずたに・かずとき/三重県津市出身、1952年11月30日生まれの55歳。広島県工学部船舶工学科卒。77年日本鋼管梶i現・ユニバーサル造船梶j入社、清水造船所(現・静岡市)、鶴見造船所(横浜市)、津事業所船殻部船殻工作室長などを経て2006年7月から有明事業所造船部長。08年6月執行役員有明事業所長に就任。趣味は登山、スキー。
企業DATA
[所在地] 【本社】〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310  【有明事業所】〒869-0113 熊本県玉名郡長洲町大字有明1
[TEL] 0968-65-7100
[FAX] 0968-65-7123
[資本金] 250億円
[設立] 2002(平成14)年10月ユニバーサル造船蒲L明事業所として発足
[事業内容] 船舶(タンカー・鉱石運搬船・ばら積み船など)、海洋構造物(海上石油貯蔵船など)、およびフローティングドッグなどの設計・製造・販売および修繕
[従業員] 689人(有明事業所) 2,300人(他の事業所も含む全社)
[URL] http://www.u-zosen.co.jp

[採用情報]
現在、登録がありません。
※この記事内容は、くまもと経済EX:2008年7月1日発行分の掲載内容です。