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くまもと経済EX 2008

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

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製造・農業
らせん形状がもたらす未知の可能性に注目集まる
GT・スパイラル(有)
クイックテントペグ テントの吹き上げによる事故に対して絶大な防止効果。熊本県新事業支援調達制度認定(番号10)
 建設工事用高機能基礎杭、食材練り混ぜ加工機、精密送りネジなど、建設、工業系から、最近ではルイヴィトンの店舗装飾に採用されるなど、その用途の広がりとずば抜けた性能による注目の高さは、県内企業では類を見ない。螺旋形状が生み出す未知の可能性は、時として、開発者である後藤社長の創造をも越えていく勢いだ。

 熊本市本山1丁目に本社を置く金属加工業GT・スパイラル(有)(後藤常郎社長)は、高機能螺旋杭「クイック」の開発企業として、建設、機械関連分野で注目を集める地場ベンチャー企業の一つ。同社が開発したクイックの未知の可能性に魅かれるように、建設、機械、工業デザイン、食品メーカーと様々な分野の技術者達が、全国から同社を訪ねてくる。クイックがその性能の高さで注目を集め始めたきっかけは、軟弱地盤の基礎杭としてのずば抜けた性能にあった。従来沼地や、埋立地、干潟などに構造物を建設するのは至難のこととされていた。建設のためには、支持地盤まで長大な杭を打ち込んで支える。または周辺一体を地盤改良するといった方法がとられることが多かったが、同社のクイックは、重機さえ持ち込むことが出来ない軟弱地盤での基礎杭として高い支持力と、人力だけで重機利用の数倍の効率での工事を実現するなど、驚く性能を示している。
 「2003年に、熊本大学の要請で、有明海の潮位を観測する観測塔を、熊本新港沖に建設しました。高さ約10メートルの鉄骨製の櫓は、5年経った今も沈下していません」。通常地盤として支持力のない干潟で、一切の地盤改良なしに構造物を建てることは不可能とされていたが、同社のクイックの性能の高さは、建設技術の常識を見事に覆して見せた。
 湿原の本道の基礎に、公園内の沼地などの橋桁の基礎などの軟弱地盤で、同社のクイックは大いにその力を発揮している。 クイックのもう一つの特長である工事の簡便性は、重機を利用せずに人力のみで、ビニルハウス、仮設テントの基礎工事を可能にした。その結果これまで難しいとされていた場所での基礎工事での利用が広がりつつある。
 卓越した性能が認められ、同製品は05年に熊本県工業大賞、06年に熊本商工会議所 商工業功労賞、07年には「ものづくり日本人賞・地域貢献賞」(主催・経産省、国交省ほか)。今年度は、中小企業庁が主催する「元気なモノづくり中小企業300社2008年版」に掲載されご7月8日に経済産業大臣より感謝状を受けるなど、数々の表彰を受ける。最近では店舗装飾用建材として、名古屋市内に昨年オープンしたルイヴィトンナゴヤミッドランドスクェア店の店舗外観全面に同社製品が使われるなど、螺旋形状が持つ造形としての美しさが評価された形となった。さらに工業技術のコア技術として、既存の機械に組み入れることで、一層の効率、性能アップが見込めるなど、その機能性の高さと可能性に益々注目が集まりつつある。


後藤常郎社長
ごとう・つねお/1968年に熊本市に後藤鉄工所を創業、装飾金物としてのねじり平鋼、ねじり角パイプの製造方法の研究を重ね、2002年に特許取得。ねじり平鋼の製造に特化したGT・スパイラル有限会社を2001年に設立。
【表彰歴】
2008年 経済産業省・中小企業庁「元気なモノづくり中小企業300社」表彰
2007年 第2回ものづくり日本大賞「九州経済産業局長賞」受賞
2006年 第9回熊本県工業大賞受賞
同年  商工業功労者表彰(熊本商工会議所)他
有名ブランド「ルイ・ヴィトン」が店舗デザインに採用
GTスパイラル杭
農業用GTスパイラル杭「クイック」 迅速施工で農業ハウス建設の省力化に貢献。施設園芸協会構造診断指導申請中
 昨年6月にオープンした有名ブランド・ルイヴィトンの新店舗「ルイヴィトンナゴヤミッドランドスクェア店」。店舗外観の装飾には、約3千本の「GTスパイラル」が使用されている。全面ガラス張りの外観を通して見えるらせん形状のスパイラルの連続したパターンは、有名ブランドならではの優雅さを感じさせ、さらに照明のライトの光を美しく反射させることで、建物そのものにさながら宝石箱のような輝きを与えている。同店舗の設計者が、ホームページ上で紹介されているGTスパイラル杭に偶然目が止まったのがきっかけで、店舗デザインとして採用されたという。これまで建設系、製造系での利用、用途拡大が期待されることが多かったGTスパイラルの、らせんという形状のユニークさが、同製品の新たな可能性を広げていく。
自動ドアの駆動部分への応用も産業のコア技術として期待高まる
名古屋市、名古屋駅前にオープンした、有名ブランド・ルイヴィトンの新店舗「ルイヴィトンナゴヤミッドランドスクエア店の新店舗外観全面の装飾に採用された同社製「GTスパイラル」。
 同社の螺旋加工技術は、工業技術の分野でも「送りねじ」や、熱交換装置への応用など、今後用途拡大が見込める。中でも今後大きく期待できるものに、自動ドアの動カユニットヘの利用が挙げられる。これは同社オリジナル製品「GTスパイラル」を、自動ドアの駆動部分に採用し、従来にない静粛性と、省電力、高い安全性を実現したもの。仕組みは工場などの製作現場で、精密な移動装置に使われる送りねじの原理を応用、らせん形状のGTスパイラルの軸回転を、ドアが開閉する動きに変換するというもの。この原理を応用し、既に製品開発を進めている自動ドアメーカーでは「小型のモーターで駆動できることによる開閉時の静粛性の高さや、停電時でも、人の力で無理なく開閉できるなど安全面でも優れた性能を持つ」と今後の需要増に大きな期待をかけている。既に新型ドアの受注に向け本格的な営業展開を開始しており、今後国内外でのビルの新築、リフォーム需要での販売拡大を見込んでいる。
 後藤社長は「ねじり加工した平鋼は、基礎杭だけでなく、様々な分野での応用が期待できます。らせん形という特異な形状が持つ可能性の数々をもっと引き出していきたい」と語る。同社では食品加工工場、機械製作工場での設備機器として、また動力系機器での利用を目的とした技術開発にも積極的に取り組んでいる。
企業DATA
[所在地] 〒860-0821 熊本県熊本市本山1丁目6番3号
[TEL] 096-211-1517
[FAX] 096-211-1518
[資本金] 1000万
[設立] 2001年2月1日
[事業内容] ねじリ平鋼、ねじリ角鋼等の製造
[代表者] 後藤常郎社長
[従業員] 6名

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2008年7月1日発行分の掲載内容です。