トップ Companies くまもと経済EX 2008 「サービス産業」へ、業界変革 リーディングカンパニー目指す
くまもと経済EX 2008

熊本の明日を拓く未来創造企業の戦略

■医療・医療関連・教育  ■飲食・サービス 
■金融・保険・卸・流通・小売  ■情報通信・ICT関連  ■電力・運輸・建設・不動産  ■製造・農業 
飲食・サービス
「サービス産業」へ、業界変革 リーディングカンパニー目指す
椛蛹
逆風の業界環境下で高利益水準をキープ
大劇本店(熊本市手取本町)
 パチンコ人口の減少、全国チェーン企業の進出によるオーバーストア、さらに昨年6月からは法規制による人気パチスロ機の完全撤去で、遊技業界は熾烈な競争環境にさらされている。
 「人気パチスロ機の撤去は業界にとっても過去最大級の大波と言ってもいい」と、これまで売上高の約4割を占めていたパチスロ機の落ち込みは企業収益に大きなダメージを与える。ピーク時、全国で18000店あった遊技場も現状では12000店舗程度まで減少していると言われる。全国平均でパチスロの売上減少率は50%と言われる中、大劇の場合は30%に留まった。「冬ソナ」「海物語」など人気のパチンコ機への入れ替えが奏功、経常利益では26億8200万円の大台をキープ、当期利益でも5億円近くを計上した。
高収益企業への戦略は「勝てる立地」へのビルド&スクラップ
 同社の高収益体質の背景には、徹底したエリアマーケティングとコストダウン戦略が貫かれている。「勝てる立地」と「効率的な設備投資」である。その勝てる立地が八代、天草、人吉と、過当競争状態が続いている熊本都市圏から南進策を執ってきた。一方では、「地域一番店になることが最大の命題。オンリーワンになれなければ撤退の覚悟も時には必要」といわゆる「勝てる立地」へのビルド&スクラップ戦略を徹底することで高収益体質をキープし続けている。
 そうした企業体力を背景に「顧客還元を実践できる店」としての評判が集客に繋がり、さらに繁盛店(地域1番店)としての好循環システムを構築しているわけだ。「しかし今後、熊本市内では出店の旨みがない。建築基準法の条例が厳しくなり様々な規制に縛られまともな出店ができない状態」と熊本都市圏での可能性は皆無に近いという。
 今後は「既存店の充実」を掲げ、地域一番店圏外の店舗のテコ人れを図る計画で、低価営業の1円パチンコ店へのリニューアルを実施、稼動率を高めて集客を強化するという。不透明な業界の先行きには「静観する」構えだが、新規出店に関しては、福岡や首都圏も睨みながら次のステップヘの準備も着々と進めている。

山口徳洋社長
やまぐち・とくひろ/熊本市坪井出身。1950(昭和25)年1月30日生まれの58歳。血液型O型。立教大学法学部卒。85(昭和60)年社長就任。(社)日遊協相談役。趣味は旅行(イタリアなど)、読書、ワイン。座右の銘は「懸命不動」(揺るぎない信念を持って事にあたれば何事も成就するという意)
無担保私募債で資金調達 高い企業信用基盤
 同社の資金調達方法も特筆すべきものがある。県内企業や全国の遊技業界に先駆け、私募債やシンジケートローンなどを利用した資金調達を行つてきた。新規店出店時など、これまで5回に亘り私募債を発行。第1回目の発行から数えると調達額19億6100万円。
 主要取引行のみずほ銀行、三井住友銀行が引受先となる銀行保証付無担保私募債。無担保私募債は、通常の担保付私募債に比べ、自己資本比率や利益率など厳しい審査基準が設定されている。同社はその基準値をクリアする財務内容であることが証明されたわけで、その企業信用力は極めて高い水準にあるといえる。資金需要旺盛な業界の中で、借入金比率も7%以下という超健全経営。これも年々減少しており、ここ数年のうちには無借金経営になる見込みだ。
「社会に受け入れられる業界に ならなければ、明日はない」
 「勝ち組の中の勝ち組へ」、地域1番店としての座をキープし続ける企業としての収益体質が“生き残り”の鍵となる。強い企業を支えるのは人材。16年前、山口社長は「業界変革」を唱え、企業改革に着手した。合言葉は「パチンコ屋からサービス業へ」。ホテルや百貨店にもひけをとらない「サービス」を提供する。「質の高いサービス」こそ、お客様に選ばれるための条件と考えている。そのサービスを体現する人材こそが、大劇の財産であり武器ともいえる。まさに企業は人なり。
 ガラス張りの経営を実現するために、CR機、プリペイドカードを導入し、翌93年からは業界に先駆け大卒の新規採用を開始した。
 大卒採用から15年、これまでの店舗展開と企業業績拡大も優秀な人材の獲得とその成長によって実現してきたものだ。今期の定期採用では高卒の新卒者20人を採用のみだが、来期からはまた大卒の採用も復活する計画だ。「今、時代はさらに変わったと思う。業界は本当の意味で淘汰の時代に突入した。社会に受け入れられる業界にならなければ、明日はない」と目先の利益のみを追い求めながら、結局は、風営法の枠から脱皮できない業界体質を引きずってしまうと指摘する。変わるためには、低価営業で遊べる“健全性”、「国民的レジャー産業」であるという自覚が必要だという。
 「パチンコ屋からサービス業へ。もう一度、業界変革を唱えた初心に帰る必要かおる」と業界のリーディングカンパニーとして変革の時代ヘチャレンジする。
企業DATA
[所在地] 〒860-0808熊本市手取本町4-1
[TEL] 096-354-0611
[FAX] 096-352-4476
[資本金] 1000万円
[設立] 1983(昭和58)年
[事業内容] 遊技場経営
[従業員] 394人
[URL] http://taigeki.com
[出先] 店舗数:10店舗

[採用情報]
現在、登録がありません。
※この記事内容は、くまもと経済EX:2008年7月1日発行分の掲載内容です。