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くまもと経済EX 2009

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業務品質の向上と広い視野での多角化を推進し次代に向けた礎を構築
大森産業
“地元の企業”として責任ある高品質の仕事を実施
 建物総合管理業の大森産業鰍ヘ1948(昭和23)年に創業、昨年創業60周年を迎えた。大森昭一前社長が逓信省への物資納入から始めた業務は、1953(昭和28)年の熊本大水害後から形を変え、本格的にビルメンテナンス事業へ進出。現在では九州内の業界各社を見渡しても、一、二の歴史を有する老舗企業となった。
 2002(平成14)年に2代目社長に就任した大森敏雄社長は「経済環境の悪化から、大変厳しい状況になってきていると思います」と、同業界を取り巻く現状を説明する。民間では価格競争が激化し、一方で公共事業の減少も進む。また入札方法などが簡略化されたため施行能力の無い業者まで入札に参加しだし、不安の連鎖によるダンピングが横行している。
 (社)熊本県ビルメンテナンス協会の副会長で、経営研究委員長を務める大森社長は、「直接費も出ないほど考えられない低価格で落札し、質の低い仕事を行い多数のクレームを受けるなど、不良業者の横行で、発注者にご迷惑をおかけする事例が出てきています」と県内の状況を危惧する。協会では粘り強い行政との話し合いを行い、品質確保のため最低制限価格の60%から80%への引き上げ、受注後のインスペクションを発注者に代わって行い、業務品質の確保に努めることを、来年度からの入札要件に入れるよう協議を進めている。「私たち協会員は@建築物の長寿命化を実現する保全技術の向上A建築物にかかわる各種業務の品質の確保Bこれら技術サービスの低コスト化の実現を目指し、努力を続けています」と協会の活動を説明する。具体的には協会で運営する熊本県総合ビルメンテナンス職業訓練校で、各種技能研修や各委員会での勉強会を実施。近年では雇用支援の活動も始めた。「一部の外部業者のために、県内業界全体のイメージが悪くなってはいけません。私たち地元の業者は、地域のため、責任ある質の高い仕事を提供できるように努力を続けています。また協会は“地域に育ててもらっている”という意識を持ち、ボランティアとしての一斉清掃や災害支援協定の締結等一層の公益活動を実施したいと考えています」と訴える。

大森敏雄社長
おおもり・としお/熊本市田崎町出身、1960(昭和35)年7月6日生まれ、49歳、真和高校−熊本商科大学商学部卒。83年オリエンタル警備保障取締役、84年大森産業取締役、87年日本ビルサービス鞄社、89年大森産業入社、91年オメックス取締役、92年大森産業(水俣)取締役、97年代表取締役専務を経て02年7月社長に就任
多様化・複雑化するビル管理業務に対応
 ビルメンテナンス事業は、社会・経済環境の変化に伴い、業務内容が多様化している。建物はスクラップ・アンド・ビルドの時代から、長期使用への転換を余儀なくされてきた。
 「消費型社会から循環型社会への大転換が進んでいます」と社会のトレンドを認識する大森社長は、企業として“新たな時代の提案力”の必要性を感じている。「単なる建物の管理ではなく、環境に配慮し、収益とコストのバランスのとれたストックマネジメントのお手伝いをしていきたい」と意欲を見せる。
 同社では2004(平成16)年に、全国の業界でも初めて全業務・全事業所でISO19001、ISO14001、労働安全衛生管理システムOHSAS18001の認証を同時取得、2007(平成19)年には初めての更新審査も終了した。大森社長は「実際に認証に則した業務運営を行ってきましたが、社員のコンプライアンス意識も確実に高まり、業務品質も向上してきているようです」と手応えを感じている。
社内マネジメントシステムを着実に構築
 また高品質業務を維持するためにマネジメント強化を推進する同社は2005(平成17)年に県内で唯一となる「平成17年度IT活用型経営革新モデル事業」の採択を受けた。採択内容は「EA(エンタープライズ・アーキテクチャー)手法による総合ビルメンテナンス業における『標準化』を実現するための管理システムの開発」。EAは業務手順や情報システムの標準化、組織の最適化を進め、効率よい組織運営を図るための方法論。導入により別個に運用されていた、複数の業務システムが標準化され、導入・運用コストの削減、重複した業務内容の統合により組織の運営コストの削減が可能になると言われている。
 さらに会社全体の基幹業務の統合管理システムを構築するなど、社内のIT化を積極的に推進。経済産業省が、中小企業のIT化推進を目的に事業化している「IT経営百選」の2006(平成18)年度優秀賞も受賞するなど、社内体制の整備に高い評価を受けている。
 さらにこれらのシステムをベースにした社内のQC活動も活発化している。各事業部ごとに社員自らが日々の業務での問題点を取り上げ、その改善に向けた努力を続けている。これらの内容は、年一回開いている社員大会で発表され、全社員からの評価を受け、優秀なグループは表彰される。
 「これら社内マネジメントシステムの体制を強化・構築することで、より高い顧客満足度の追及が可能になると考えています」と大森社長は多様化するニーズへの対応に自信をのぞかせる。
グループの総力を挙げ県外進出・多角化を推進
 同社では2006(平成18)年2月福岡市博多区に、佐賀支店を統合した福岡支店を新設した。2年後に迫った九州新幹線の全線開業を見据えた同支店開設により、鹿児島営業所、熊本本社と連携し九州の縦軸での展開が実現。全九州を視野に入れた事業展開を模索する。
 一方で大森社長は事業多角化の推進にも意欲的だ。一昨年3月には、子会社である潟Iメックス(同社長)が建設・管理・運営するマンション「オーファス水前寺」が完成。今後も自己資産の有効活用に積極的に取り組む姿勢を見せる。
 さらに「将来的に収益の柱となる可能性のある事業」として現在4店を運営しているコンビニエンスストア事業の拡大も模索している。今年は8月にも新店舗のオープンを計画。店舗開設のペースを若干加速させる予定だ。
 「関連会社とも一体となりグループ総力を結集したい」と変化する事業環境への対応を示す大森社長は「この荒波を乗り切るためにも社内体制強化・業務品質の向上を進め、M&Aも選択肢に入れながら変化への対応力を高めたい。一方で多角化の芽を育てながら、次世代に向けた事業の礎を構築したい」と固い決意で経営の舵取りを行う。
企業DATA
[所在地] 〒862-0920 熊本市月出1-7-13
[TEL] 096-384-0251
[FAX] 096-382-7752
[資本金] 3,000万円
[設立] 1955(昭和30)年12月
[事業内容] 建物総合管理業
[年商] 18億2,100万円(08年9月期決算)
[代表者] 大森敏雄社長
[従業員] 463人
[URL] http://www.ohmori-fm.co.jp
[出先] 福岡支店、鹿児島営業所  事業所:八代、芦北、水俣、阿蘇、玉名、菊陽、嘉島
[関連企業] 潟Iメックス、大森産業梶i水俣市)

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※この記事内容は、くまもと経済EX:2009年7月1日発行分の掲載内容です。