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ワクチンを軸に先端バイオ技術で、熊本から世界市場へ挑戦
一般財団法人 化血研(化学及血清療法研究所)
新たな感染症の出現や新型インフルエンザの世界的流行を受け、ワクチンメーカーとして重要度を増す化血研。
タイ国営製薬公社への技術支援や米国保健福祉省から次世代弱毒痘そう(天然痘)生ワクチン開発に最大3400万ドル(約28億円)の資金提供を受けるなど、化血研の技術開発力は国際的にも注目を集めている。
細胞培養新型ワクチンの第T相臨床試験を開始
 化血研(熊本市大窪1丁目、船津昭信理事長)は、昨年の新型インフルエンザ流行時に、国内ワクチンメーカー4社の中の1社として国内メーカー分の4割を供給するなどメーカーとしての高い信頼性と重要度を増している。
 2004(平成16)年から国立感染症研究所、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、独立行政法人医薬基盤研究所とワクチンの開発を進めてきた。2008年4月に「沈降新型インフルエンザワクチン(H5N1株)」の製造販売を厚生労働省に承認申請し、2010年10月に高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)用の同剤の製造販売承認を取得した。2009年2月には製薬メーカーのグラクソ・スミスクライン(=GSKジャパン)、グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズ(本部ベルギー、=GSKバイオ)と、新型インフルエンザワクチンの共同開発契約を締結し、2011年3月からは、共同開発中の「細胞培養新型インフルエンザワクチン」の第T相臨床試験を開始している。今回の第T相(臨床薬理)試験では、健康成人男性を対象として、同剤を接種した際の安全性及び免疫原性を検討する予定で、本試験の結果を踏まえて次相への移行を検討していく。
菊池研究所を核にバイオ技術で医薬品開発
 化血研は、バイオ技術を生かした医薬品の開発に力を入れている。バイオテクノロジー研究の拠点となる菊池研究所(菊池市旭志川辺)は、1985年に開設、1988年には純国産技術で製造された遺伝子組換え医薬品の第1号となるB型肝炎ワクチン「ビームゲン」の製造を開始している。また、事業費50億円超を投じ、菊池研究所内に遺伝子組換えアルブミンの製造工場を建設した。化血研では遺伝子組換え酵母を培養して製造する「遺伝子組換えアルブミン製剤」を開発しており、現在、第U相臨床試験を終了し、第T相に向け準備している。また、生産期間の短縮と大量供給が期待出来る細胞培養インフルエンザワクチンのパイロットプラントを菊池研究所に建設した。
2012年3月稼動を目指し新製造棟を建設
 化血研では、インフルエンザワクチンの新製法(細胞培養)に置き換わるまでの間、従来製法(鶏卵培養)での増産体制整備も必要となるため、2012年3月の本稼動を目指し、本所内に約2倍の生産能力を持つ製造棟の建設を始めた。建物は地上8階地下1階建てで、延べ床面積は約2万u。高さは約51mとなる。あわせて地上9階地下1階建ての新管理棟(延べ床面積約7千u)も建設している。
熊本から世界市場へ
 化血研では、国内外で15程度の開発テーマが進行している。昨年は新型(H5N1型)インフルエンザワクチン、動物用のMD/ND組換えベクターワクチン、2011年1月には細胞培養日本脳炎ワクチンと相次いで承認を取得し、早期の製品化を進めている。さらにDPT(ジフテリア・破傷風・百日ぜき)に不活化ポリオワクチンを加えたDPT/IPV(4種混合ワクチン)は第V相まで進めているなど、「これからの事業の柱が立ち上がってきた」(船津理事長)と期待を寄せる。
 現在承認申請中の3種混合ワクチン「MMR-U」は米国メルク社との共同開発。エイズウイルス(HIV)感染症の治療薬開発のため、英国に続いてヒト化抗HIVモノクローナル抗体の米国での第T相試験を実施中。また、2010年12月には、米国保健福祉省から次世代弱毒痘そう(天然痘)生ワクチン開発に最大3400万ドル(約28億円)の資金提供を受ける契約を締結した。「ワクチンを軸に、熊本から世界に通用する生物学的医薬品の開発に挑戦していく」と語る船津理事長、世界市場に向け挑戦を続ける。
profile
船津昭信 理事長・所長
ふなつ・あきのぶ 熊本県山鹿市出身、1945年(昭和20年)5月1日生まれの66歳。熊本大学理学部化学科卒。69年(財)化学及血清療法研究所入所。88年第3製造部長、92年理事、97年常務理事、2000年副所長、04年7月理事長・所長就任。趣味はゴルフ、ウォーキング
企業DATA
[所在地] 〒860-8568 熊本市大窪1丁目6-1
[TEL] 096-344-1211
[資本金] 337.4億円 (平成23年3月期)
[設立] 昭和20年12月
[事業内容] 生物学的医薬品の研究・開発並びに、それらを応用した医薬品等の製造・供給
[代表者] 船津昭信(理事長・所長) 副理事長/宮本誠二 常務理事/溝上 寛、水野弘道
[従業員] 1,724人(平成23年4月現在、パート含む)
[URL] http://www.kaketsuken.or.jp/
[出先] 菊池研究所、阿蘇支所、東京事務所、東京営業所、長崎出張所、配送センター

[採用情報]
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※この記事内容は、くまもと経済EX:2011年7月1日発行分の掲載内容です。