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くまもと経済EX 2007

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国内唯一の2輪車生産拠点へ ホンダの原点と先進性を担う
本田技研工業 熊本製作所
創業の地・浜松から2輪車生産を移管
これまでの中・小型2輪の生産に加え、中・大型2輪の生産移管が決まった菊池郡大津町の熊本製作所
 本田技研工業梶i東京都、福井威夫社長)は昨年9月、浜松製作所(静岡県浜松市)で生産している中・大型2輪車の生産を熊本製作所(菊池郡大津町、山下雅也所長)に集約することを発表した。山下所長は「創業の地・浜松から熊本へ、ホンダの創業精神を受け継ぐことでもあり、大きな責任を感じている。もう一度足腰を鍛え直し、他社だけでなく、自社の海外拠点にも負けない国際的な競争力を持った製作所にしたい」と意欲を語る。この生産移管により熊本製作所は、同社国内唯一の2輪車生産拠点となる。
延べ床面積約10万uの大規模工場新設
今年1月、県庁で行った新工場建設に伴う立地協定の調印式で記念撮影に応じる左から山下雅也所長、潮谷義子県知事、家入勲大津町長
 同社では現在、総事業費約170億円を投じ熊本製作所内に新工場を建設中。完成は12月末を予定している。
 新工場は鉄骨造り2階建て、延べ床面積約9万8千uの大規模工場。完成後、浜松製作所の中・大型2輪車生産を順次、移管する。熊本への2輪車生産集約で、2輪完成車の生産能力も現在の約2倍にあたる年間50〜60万体制になる見込みとなっている。
 今年3月末には、新たに敷地内に鉄骨平屋(一部2階)建ての新鋳造工場(建築面積・1万7800u)も完成させた。「20年、30年後でも品質・コスト両面で国際競争力のある生産ラインをつくり、効率的なモノづくりができる体制を整えたい」と話す山下所長。新工場には完成車の組立ラインを集約し、鋳造−加工−組立−完成までの工程が整然と流れる仕組みの構築を目指し、所内全体のレイアウトの見直しも行っていくという。
汎用製品も好調に推移
汎用エンジンの製造ライン
 05年1月から、汎用エンジンの新工場が稼動。浜松製作所からV-ツインエンジンや水冷エンジンなどの汎用エンジンの生産が移管され、熊本製作所に船外機を除く同社の汎用主要製品の生産が集中されている。汎用エンジンの需要は、国内だけでなくアメリカを中心とした海外でも伸びており、順調に生産台数を伸ばしている。
 汎用部門の完成機では、ガス会社から、給湯ユニットと併せて、エコ・ウィルの名で売られている「マイクロコージェネ」や高齢者向け電動カート「モンパル」などを生産。また、次世代汎用エンジン「iGX」に組み込むECU(電子制御ユニット)の基板なども製造している。山下所長は「製品の知能化に必要な電子基板の実装を社内で行っているのは、ホンダの工場の中でも熊本製作所だけ。これまで主に電機メーカーが手掛けてきた領域で、会社にとっても大きなチャレンジの一つ」と話す。
新会社設立し太陽電池の量産もスタート
敷地内に完成した太陽電池量産工場。潟zンダソルテックが運営し、今年秋からの本格稼働を予定している
 また、今年4月には、敷地内北側に太陽電池の量産工場の建屋が完成した。同工場の敷地面積は約2万5千u、建築面積は約1万1千u、鉄骨平屋建て。太陽電池事業は完全子会社の潟zンダソルテック(菊池郡大津町、数佐明男社長)が行い、秋からの量産開始に向け、現在、試運転を行っている。
 量産化する太陽電池は、ホンダが独自に開発してきた非シリコン系次世代型薄膜太陽電池。製造時に必要なエネルギーやCO2の発生を従来の約半分に抑えることができ、一般的な太陽電池とほぼ同じ発電効率を実現できるという。年間で一般家庭約8千世帯分(1世帯標準3キロワット換算)に相当する27.5メガワットを生産する計画だ。
マザー機能の強化進める
 国内拠点からの生産移管、また新分野の製品群の集積などが進んでいるが、海外の生産を支援する二輪・汎用生産のマザー機能も同製作所が持つ大きな特長の一つ。
 熊本製作所では、世界のマザー工場として海外工場の支援を行っており、海外拠点に対して基盤技術、量産技術、生産を安定させる技術、コストダウンの技術、また、品質を安定させる技術やノウハウを水平展開している。同製作所の従業員約3600人のうち、約400人は海外を支援する専任担当者が占めるという。今後も、技術レベルの向上や、技術者の育成に努め、海外拠点を統括するマザー機能の充実も図っていく。
源流強化を加速し、技術力磨く
山下 雅也 所長
 昨年、1976(昭和51)年1月の操業開始から30年の節目を迎えた同製作所。ホンダの2輪・4輪・汎用というメーンとなる3事業を一つの工場内で行っている世界で唯一の製作所でもある。
 ホンダの原点とも言える2輪生産が集約され、太陽電池の量産化や電子基盤の実装など新たな領域を切り開いていく先進性も持ち合わせた国内拠点として、ますます注目を集める存在になりつつある同社熊本製作所。山下所長は「技術者をはじめ、生産に携わるすべての人間が“ホンダが新しいことにチャレンジしないで誰がやるんだ”という企業スピリットは、今でも脈々と受け継がれている。源流強化を加速し、技術力にさらに磨きをかけ、これからの時代にふさわしい熊本製作所をつくりあげたい」と力強く語った。



山下 雅也 所長
やました・まさや 長崎市出身。1953(昭和28)年4月5日生まれ54歳。慶應義塾大学経済学部卒。77年4月本田技研工業鞄社。02年4月購買本部四輪購買1部長、03年6月取締役、05年6月執行役員、06年4月1日付けで熊本製作所長に。
企業DATA
[所在地] 〒869-1293 菊池郡大津町平川1500
[TEL] 096-293-1111
[FAX] 096-293-8280
[設立] 1976(昭和51)年1月
[事業内容] 2輪車・軽4輪・汎用エンジン製造
[代表者] 山下 雅也 所長
[従業員] 約3600人

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※この記事内容は、くまもと経済EX:2007年7月1日発行分の掲載内容です。