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(財)肥後の水資源愛護基金  
 長野 吉彰  (ながの よしあき)

  理事長
プロフィール
熊本市出身、1925年(大正14年)7月3日生まれ、79歳。熊本中学、第五高等学校を経て51年九州大学経済学部卒。同年肥後銀行入行、66年長崎支店長、70年取締役、75年常務取締役などを経て、84年頭取、93年代表取締役会長、01年6月退任、以後常任顧問。(財)肥後の水資源愛護基金理事長のほか、(社)九州・山口経済連合会副会長(農林水産委員長)、(財)地域流通経済研究所顧問、(財)熊本開発研究センター理事長など公職多数。座右の銘は「精力善用、自他共栄」。柔道5段。
掘り続ける水資源涵養の井戸
 中国に「水を飲むときは井戸を掘った人を忘れるな」という諺がある。近代中国随一の知徳兼備の知識人として長野氏が私淑してきた周恩来総理は、1972年、「我々は井戸を掘った方々のことを忘れない」と日中国交正常化に尽力した人々を讃えた。白川中流域での水田湛水による地下水涵養の取り組みや、阿蘇南外輪などでの水源涵養林の植樹など、近年着実な広がりを見せている熊本の水資源保全活動に関して言えば、大地に最初につるはしを入れた長野氏の先見性は末永く記憶されるべきであろう。
 長野氏の主導で『肥後の水資源愛護賞』が創設されたのが昭和62年。時折、氏は講演などで「何で銀行屋が水資源なのかと言われた」とユーモアを交え当時を振り返るが、「ふるさとのかけがえのない地下水を枯渇と汚染から守ろう」という氏の呼びかけは、バブルに浮かれた空気が支配する経済界には奇異に映ったようだ。しかし、本物は時間の検証に耐える。その後の環境に対する社会的関心の高まりを見れば、氏の洞察力の鋭さと先見性は時代が証明したと言えるだろう。
 水保全活動をより強固且つ永続的なものにするため氏は平成4年に「財団法人肥後の水資源愛護基金」を設立、財団ではこれまでに水資源の涵養・保全に取り組む213団体・10個人を顕彰、また肥後銀行の行員や家族、同行のOB・OGを中心とするボランティアの手で、4年がかりで阿蘇南外輪に4000本の植樹を実施した。今年も4月に西原村で広葉樹を植える。その他、これまでに雨水利用式店舗の建設(2カ所)、雨水浸透舗装の採用(20 カ所)、女性トイレ節水用「音姫」の設置(約400基)、全店の水道蛇口の節水機能化等、肥後銀行の節水努力は末梢神経まで浸透し、その活動は広がりと深みを着実に増しつつある。
 長野氏が掘った…傘寿を過ぎてなお掘り続けていると言うべきか、その井戸からは清冽な地下水が滾々と湧き続けている。  
8608615  熊本市練兵町1番地  TEL096(351)3882

 

昭和50年代から熊本経済同友会で水資源問題を提起、624月「肥後の水資源愛護賞」創設、平成49月「財団法人肥後の水資源愛護基金」設立。基本金/23.000万円 理事長/長野吉彰(肥後銀行常任顧問)副理事長/小栗宏夫(肥後銀行頭取)常務理事/藤本昌通((財)肥後の水資源愛護基金事務局長) 【運営の特長】基金利息収入低下のため、平成5年末、当時肥後銀行会長であった長野理事長が率先して毎年数十万円を拠金、全役職員もれなく支持し、その拠金を主財源に運営している。

 

※この記事内容はくまもと経済3月号(2005年2月28日発行分)の掲載内容です。