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パルスパワーのアニサキス殺虫装置を開発・・・・熊本大学と水産加工会社

 熊本大学産業ナノマテリアル研究所と水産加工の潟Wャパン・シーフーズ(福岡市南区、井上陽一社長)は、魚介類に寄生するアニサキスを大電流で殺虫する方法を開発、今秋から新技術で処理した刺身を九州地区の一部のスーパーが試験的に出荷を始める予定。
 アニサキス食中毒は、生きたアニサキスをアジ、サバ、イカなどの刺身で食べた際に、激しい腹痛や嘔吐(おうと)などを引き起こす食中毒。水産業界ではこの食中毒を防ぐことが長年の課題となっている。現在、加熱せずにアニサキスを殺虫する方法は、マイナス20℃で24時間以上冷凍することによる死滅であるが、魚身のドリップ流出、退色、食感の軟化など引き起こして商品価値を著しく下げてしまうという。今回、熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授らとジャパン・シーフーズの共同研究グループが、パルスパワー技術により瞬間的に大電流を流すことにより魚身の内部にいるアニサキスを殺虫できたことから、その実用化に向け新技術で処理する装置のプロトタイプ機を開発した。現在、ジャパン・シーフーズの水産加工工場に設置し既に稼働しており、殺虫処理したアジの生食用刺身のスーパーへサンプル出荷を始めるもの。
 パルスパワーとは、200X(もしくは100X)の電源から電気エネルギーを一旦コンデンサへ蓄電し、これらをマイクロ〜ナノ秒レベルで取り出すことで得られる瞬間的超巨大電力のこと。熊本大学産業ナノマテリアル研究所では、パルスパワーの産業応用化を推進しており、排ガス処理やオゾン生成、廃水浄化、コンクリート廃棄物の減容化、リチウムイオン電池リサイクル、生体内物質の活性・不活性化、殺菌など、幅広い分野への適用が進められてきた。ジャパン・シーフーズは、刺身などの水産加工メーカーで、アニサキス殺虫方法の開発を長年模索していた。今回、パルスパワーの技術が殺虫に応用できると考え、熊本大学の浪平准教授に共同研究を依頼、2018(平成30)年から経済産業省「戦略的技術基盤高度化支援事業(サポイン事業)」の補助を受けて、パルテック電子梶A福岡県工業技術センター生物食品研究所と共同で、パルスパワーを用いたアニサキス殺虫装置の開発を行ってきた。開発したプロトタイプ機では、一度に3sのアジフィーレ(3枚おろしにした片身)を約6分で処理できるという。
 熊本大学の浪平准教授は「今回開発したパルスパワーによるアニサキス殺虫方法は、加熱・冷凍以外でも殺虫できる世界初の技術。一部サンプル出荷を始めたが、今後の課題としては、食品の世界規格・基準『コーデックス規格』などの認証取得と量産処理化へ向けた次世代機の開発を急いでいる」と話している。
_くまもと経済 業界NAVI_:2021年12月30日発行 No.487

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