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「熊本は液晶ディスプレー事業の中核拠点」
 古森重隆・富士フイルムHD社長インタビュー

富士フイルムホールディングス梶i富士フイルムHD、東京都港区、古森重隆社長)は10月30日、菊池郡菊陽町の生産子会社・富士フイルム九州(山口光男社長)の第1工場の操業を開始した。
これを機に古森富士フイルムHD社長が来熊、記者会見で「富士フイルム九州はフラットパネルディスプレー事業の成長を支える中核拠点として、大変重要な役割を担っていくことになる」などと語った。会見でのあいさつの要旨とインタビューの模様は次の通り。
液晶ディスプレー事業は新生・富士フイルムの重点成長事業
富士写真フイルムは今年10月、富士フイルム、富士ゼロックスという2大事業会社を傘下に収める持ち株会社・富士フイルムホールディングスとなり、新たなグループ経営に移行しました。この富士フイルムホールディングスを中心にグループ全体の戦略的マネジメントを強化し、グループとしてのさらなる躍進を進める体制を整えた次第です。
フラットパネルディスプレー事業は、こうした「新生・富士フイルム」を象徴する重点成長事業と位置付けています。これから富士フイルム九州は、このフラットパネルディスプレー事業の成長を支える中核拠点として、大変重要な役割を担っていくことになります。
ご存じの通り、液晶ディスプレーは日本をはじめ、米国や欧州でも急速に普及が進んでおります。例えば、2006年における液晶テレビの世界販売台数は、昨年の約2倍になると予測されています。しかし、それでもまだ、テレビ市場全体に占める液晶テレビの割合は6%程度に過ぎず、今後のさらなる普及が予測されている状況です。また、画面サイズの大型化も進んでおり、08年度の液晶ディスプレーの合計面積は、05年度に比べると約2・5倍に拡大するとされています。このような状況の中で、富士フイルム九州は第1工場の第1ラインの落成式を迎えました。さらに第2、第3工場の建設もすでに着工しており、最終的には6台のラインが稼働することになっています。富士フイルム九州が「フジタック」を供給しなければ、液晶テレビの生産ができない状況です。そういう意味では、極めて重要な供給責任を担っていますし、フジタックを使用した液晶テレビを世界各国の皆さまにお使いいただくという意味でも極めて重要な使命を帯びた工場でもあります。 「フジタック」の事業は年々拡大を続けています。フジタックは透明性、光学特性におきまして、非常に優れており、液晶用の偏光板保護フイルムとしては約80%の世界シェアを持っています。さらなる能力増強と安定供給という強いニーズに応えていくため、約4カ月に1台のペースで増強を続けていきます。
今後、フラットパネルディスプレー材料を含む成長事業のさらなる増進、あるいはライフサイエンス分野における化粧品・サプリメントの発売など新しい分野へも積極的にチャレンジしていく所存です。その結果、来年度には売上高2兆8500億円、営業利益2千億円という過去最高の業績を見込んでいます。また、現在の中期経営計画である創立75周年を迎える09年度には、売上高3兆1500億円・営業利益2500〜3千億円を見込む計画も進行中です。そのような状況の中で富士フイルム九州を中心としたフラットパネルディスプレー材料事業は、極めて重要な事業に位置付けています。
  第4工場の建設も検討
―近年、薄型テレビの価格下落が激しいが、実際にメーカー側のコスト削減を求める要求は厳しいのか。
古森 全体的には大変厳しい環境だ。しかし、富士フイルム九州で生産する「フジタック」は非常に競争力の強い製品であり、市場の拡大によって受注環境もタイトな状況が続いている。そういう意味で申し上げると、比較的に安定した分野だと予測している。
―富士フイルム九州は、韓国、台湾に近いこともあり、これらの地域を視野に入れた生産展開を考えているのか。
古森 世界規模で液晶パネル生産するメーカーのうち、1位、2位、3位、5位、6位は韓国・台湾勢。これらの地域では大規模な生産が続いている状況だ。そういう点で申し上げれば、富士フイルム九州は「フジタック」の生産基地だけでなく、輸出基地としての責任も担っている。
―生産能力を増強するため、第3工場の建設までがすでに決定している。以前の会見では第4工場着工の可能性もあると示唆したが。 古森 現在の市場の状況を考えれば、(4期以降の工事は)やることになるだろう。ただ、実際のところ、具体的にはまだ何も決まっていない状況だ。 ―生産品目として「フジタック」以外の生産も考えているのか。
古森 「フジタック」専用の工場として建設している。ただ、フラットパネルディスプレー事業では、視野角フイルム(WVフイルム)やCVフイルムなど「フジタック」以外の生産も手掛けており、将来的にはこれらの生産も検討していきたい。
―高い生産設備を持つ施設ということだが、静岡や神奈川にある既存工場に比べてどういう点で前進しているのか。また、BOOシステムをオンサイト展開する中で、どの企業が担当するのか。
山口(富士フイルム九州社長) 静岡の工場に類似した生産性を持っているが、富士フイルム九州の特徴は「フジタック」を単一で生産する工場であること。それから生産管理棟に中央管制室を設け、発信するという管理の方法も特徴的だと思う。オンサイトの部分は新日鉄が担当する。
富士フイルム九州がフジタックの主力工場に
―将来的にはフラットパネルディスプレー事業の中心的な位置付けになるとされているが、既存工場はどのようになるのか
。 古森 富士フイルムでは現在、国内に足柄工場(神奈川県)、小田原工場(同)、富士宮工場(静岡県)、吉田工場(同)などがある。現在多角化を図っており、さらに一般写真を担当する工場の生産を一部停止する代わりに、他の製品を生産する工場を建設するなどスクラップアンドビルドを強力に進めている。
―「フジタック」は富士フイルム九州だけで生産することになるのか。
古森 足柄工場、吉田工場でも生産する。ただ、現状よりも生産数量が倍増すれば、この工場が主力工場になる。
―中長期的に見た場合、他社の参入などリスク要因をどのように考えているのか。
古森 「フジタック」は天然の素材を使っており、コストの面で強い競争力を持っているし、透明性や軽滑性など品質面でも「フジタック」は強さを維持している。加えてWVフイルムは富士フイルムの特許製品であり、この業界では強い競争力を持つ。市場は急激に伸びている状況で、しっかりとした供給責任を果たしていきたい。
―富士フイルムが事業多角化を進めている中で、熊本でもフラットパネルディスプレー以外の事業展開は考えているのか。
古森 現在のところ、考えていない。ただ、熊本に進出して以降、地元の方々から多大なご協力をいただいている。やっぱり九州はいいところだ。富士フイルムが急激に業容を変革し、あるいは拡大させていく中で、これから新しい工場も必要になってくる可能性が高い。そういう動きやチャンスがあれば、九州を有力な候補地のひとつとして考えていきたい。 (佐藤奈)

週刊経済:2006年11月14日発行 No.1401

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